HGTV アメリカ住宅事情

365日一日中、食べることに関する番組を放送しているFOOD NETWORKというケーブル局のことは、以前に紹介した。フジテレビからフォーマットを買って「アメリカ版料理の鉄人」を今でも続けてやっているところだ。

このFOOD NETWORKの姉妹局に、HGTVという局がある。
http://www.hgtv.com/
こちらは、一日中、住宅に関する番組を放送している。HGTVはHome and Garden Televisionのことらしい。「衣食住」のうち「食」と「住」はアメリカでは特に関心が高いというか、お金になるビジネスなのだと思う。(「衣」は、大都市以外ではかまわない人が多いからなあ...)

このHGTVの看板番組「House Hunters」は家探し番組。引っ越しを考えている人が登場して、地域、予算、間取り、床はHard Wood Floor(日本で言うフローリングですね)とか、クローゼットが広いこととかWish Listを出すと、不動産屋が候補を3件紹介して、家を案内するという番組。見ているとアメリカ各地の住宅事情が分かって、とても面白い。

例えばテキサス州の大都市郊外だったら、広大な土地に建つ4ベッドルーム、5ベッドルームの家が1500万くらいで手に入る。同等の家をニューヨークやロサンゼルスの郊外で探そうと思ったら1億以上が相場だ。私の住むワシントンDC郊外も住宅価格は割高。3ベッドルームが5000万〜7000万。DC市内なら1億近い値がつく。(1ドル100円くらいで計算してます。今だったらさらに安いですね)

3ベッドルームは、日本風に言うと3LDKだけど、ひとつずつの部屋が大きいので床面積にすると日本の標準の倍はある。国土が広いということは、本当にうらやましいと思う。

このHouse HuntersにはInternational版もあって、海外で暮らすアメリカ人がその土地で家を探すのを同じ手法で紹介する。アメリカ人の独身サラリーマンが東京で家を探す番組を見たことがある。狭くて高い、とつくづく思ったけど、パリやローマも似たようなものだった。

住宅に関する文化の違いで面白いなあと思うのが「Design to Sell」という番組。家を「売るためにリフォームする」番組。壁を塗り替えたり、家具を現代的なものに変えたり、キッチンやバスルームの設備を新しくすることで、元手を数十万かけても販売価格が100万単位で違ってくるからリフォームしましょう、というワケ。なお、アメリカの住宅は冷蔵庫を含むキッチン設備と洗濯機・乾燥機は家についてくるものというのが常識になっている。簡単なことはプロに頼まず自分でやれば安く上がる。番組は、そんなノウハウを実際に家を売ろうとしている人の実例で紹介してくれる。

これは割に普通のことらしくて、知り合いのDanが半年くらい前から、亡くなったご両親の家を売るために徹底的にリフォームした。床を張り替え、キッチンのレンジ、冷蔵庫、オーブンなど最新機種に変え、バスルーム設備を変え、外壁も塗り替え、前庭も作り替えた。忙しかったのでプロに頼んで総額400万くらいかかったけれど、周辺の相場より1000万くらい高い売値をつけて売りに出したら、わずか1週間で買い手がついた、と言っていた。

HGTVには他にも、インテリアをリフォームする番組、家の外観や庭を作り替える番組、初めて家を買う人の家探しに密着して紹介する番組などなど、様々な切り口で住宅のことだけに特化した番組が毎日毎日放送されている。

我が家のお気に入りは、Holmes on Homesという番組。Holmesさんという大工の棟梁が、欠陥住宅や欠陥リフォームをつかまされて泣いている人を助けにいく。欠陥部分を修復するために、たいてい土台からやり直すことになるのだが、壁や床をはがすと、電気配線がめちゃくちゃだったり、柱が土台に乗っていなかったり、構造上の欠陥が次々現れる。Holmesさんはそれを「This is unacceptable (とんでもない!)」とか「This is illegal(これは違法だ!)」とか嘆きながら、どこがなぜ問題なのか説明してくれる。最後はきっちり欠陥を修復して、依頼主の希望以上の家に仕上げてめでたく終わる、というワケ。家を造っていく課程や詳しい構造を説明してくれるので、面白くて楽しみな番組です。

このHGTVには、一年に数回、視聴者に家をプレゼントするという企画がある。Dream Homeという企画は、人気の建築家とインテリアデザイナーが作った最先端の家が用意される。家だけでなく家具も電気製品も食器も、必要なものは全部そろっている家と、その家に移り住むために必要な費用50万ドル(4500万くらい)までつく。まさに夢のような話。2010年のDream Houseは、ニューメキシコ州の周囲に何もない丘に建つ豪邸だった。これほど大規模ではないが、ニューヨーク、マンハッタン中心部のインテリアを人気デザイナーが仕上げたコンドミニアムがもらえるUrban Oasisという企画も進行中。

このHGTVがいいのは、建築家やデザイナーなども含めて、登場するのがみんな一般の人たち。かれらの自然なやりとりは、英語の表現を学ぶのにとてもいい。そんなわけで、私もそうですが、非英語圏からアメリカに来て、HGTVとFOOD NETWORKにはまってしまった友人たちは、けっこう多いです。