電話セールス 日米比較

月から仕事復帰して、週に2〜3日はオフィスに行くのだが、家で仕事をする時間も多い。日本風のフルタイムジョブではなくて、仕事の内容によっては家で仕事するTele-commutingは、なかなか快適だ。まあ、まだアメリカからの引越の後片付けがだらだらと続いているので、仕事も生活も「とりあえず」な感じではあるのですが。

家にいると、いろんなセールスの電話がかかってくる。あやしげな投資話だったり通販の化粧品だったり、不動産や保険だったり。久しぶりに通っているオフィスでも、総務の女性たちが、頻繁に社長や役員あてにかかってくるセールス電話の対応に時間をとられている。以前は、私もオフィスでこうした電話対応をする立場だった頃がある。

会社あてにかかってくるのは、不動産、電話&通信、投資あたりが多かった。電話セールスのために雇われて電話をしてくる、あまり社会経験のなさそうな相手は、決して話をして気持ちのよい相手ではないことが多く、後味の悪い思いをすることも多々あった。私の知る限り、セールス電話から取引が始まったことはなく、電話をかける側も、受ける側も、その時間は仕事の効率に何の貢献もしない無駄な時間だ。

アメリカに行ってから、自宅にかかってくるセールス電話は、ちょっと楽しみな時間になった。以前に書いたことがあると思うが、アメリカのセールス電話は、日本とはシステムが違う。かかってきた電話をとって「Hello」とか「Yes」とか何か声を発すると、録音されたセールストークがしゃべり出す。「Hi, I’m John!! Today, I have a good news for you...」なんて感じ。

セールストークの内容はさまざま。担当者が自分で内容を考えて自ら録音して、自動的に電話をかけるマシンにセットしてあるらしい。トークは人それぞれで個性豊かだし、きれいなネイティブの英語が聞けることもあれば、訛りの強い非ネイティブ英語のことも多い。

アメリカに行った当時は、2009年のテレビ放送完全デジタル化に向けてケーブルテレビ会社など多チャンネル放送サービスのセールスがひっきりなしだった。「いまなら月30ドルで150チャンネルが見られます。さらに、いま契約すれば最新の液晶テレビを3台無料でついてきます!!」なんていう眉唾な話もあった。あと、リーマンショックの直後でクレジットカードの支払が破綻する事件が相次いでいた頃に「あなたのクレジットカード支払を圧縮できます」なんていう怪しげな融資話も多かった。

録音されたセールストークなので、ただ聞いていればいい。特に忙しくなければリスニングの勉強のつもりで最後までつきあっていた。録音されたセールストークの最後は「もっと詳しいことはダイヤル1を押してください。マネージャーがお話しします。この電話が必要ないなら、ダイヤル9を押して下さい」などの説明で終わる。(ダイヤル9を押すと、そこからはもうかかってこなくなる)

本当に興味のある人なら「1」を押してマネージャーと話をするだろう。興味がなければ電話を切るわけだが、相手は録音テープなのだから受け側にあまり悪感情は残らない。セールス担当はトークを録音して機械にセットすれば、あとは他の仕事をしていられる。仕事の効率としては、悪くない。

一方、生身の人間が電話をしてくる日本の場合、詳しい話を聞きたいと言ってくれる人が100人に1人いたとして(良くてもそんな確率だろうと思う)、1件電話するのに5分、1日で100件電話するのは難しい。えんえんと電話をかけ続け、断られ続けて一日。消耗するだろうな。何とか断って電話を切るために言葉を選ぶ受け側も、余計な時間と神経を使うし嫌な気分が残る。押し売りのようなイメージが定着した生身の電話セールスの「生産性」は、一体いかほどのものかと思ってしまう。

だいたいアメリカでは、自分の電話番号を登録しておくとセールス電話がかかってこなくなるシステムもある。「Do Not Call Registory」という政府が運営するサービスで、登録後31日以上たってもセールス電話がかかってくるようだったら、同じサイトに苦情申し立てのフォームも用意されている。この制度は、ぜひぜひ日本でも実現してほしいものだ。

かつて私が仕事をしていて最悪だったセールス電話は「ご用件は?」と聞いても「社長さんか男性の社員の方に代わって下さい」という電話。「なぜ男性でないといけないの?」と聞くと「そうするように言われてますから」という返事。「そういう会社とおつきあいする気はないので、ご用件を聞いても無駄ですからけっこうです」と断りました。それでも、その後も同じ内容でかかってきていました。まだそういうことやってる会社、あるのかなあ...