アメリカが注目する日本の「草食系男子」

縮こまる経済、希望を持てず覇気のない若者たちーーそんな日本の新しいイメージを紹介するニュースが続いている。

ニューヨークタイムズは10月17日の日曜版に「Japan Goes From Dynamic to Disheartened(ダイナミックな経済から一転、自信喪失した日本)」という大きな記事を掲載した。
http://www.nytimes.com/2010/10/17/world/asia/17japan.html?_r=1&scp=1&sq=Japan%20Goes%20From%20Dynamic%20to%20Disheartened&st=cse
すごく長い時期だったのですが、要約すると;

かつてアジアの片隅から躍り出て西欧の繁栄を脅かすかに見えた日本は、バブル崩壊後、デフレ経済から抜け出せずにゆっくりと衰退している。そんななかで人々は自信を失い、かつては大きく投資をして大きく消費する豊かさを楽しんでいた世代とは違う「消費嫌い」の若者たちが増えているーーというような内容。

そして今朝(10月25日)のワシントンポスト。「Japan’s young men seek a new path(新しい道を模索する日本の若者たち)」という、これまたけっこう長い記事。(優しそうな〈草食系男子〉の写真が何枚もついています)
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/10/24/AR2010102403342.html

ニューヨークタイムズは経済分析記事だったが、ワシントンポストは、日本の若い男性たちに焦点をあてる。彼らは「草食系:herbivorous」で内向きになり、日本経済の成長を支えた親世代の「モーレツ」とは違う道を模索している。クルマをほしいとは思わないし、お酒もあまり飲まない。安定しているが毎日14時間も働く仕事は辞めて自分らしい人生を送りたいと思っている。お金や物質や名声に執着せず、おとなしくて優しくて質素で礼儀正しい、それが今の日本の若い男性像だと。実際、最近発表された統計によると、20代の平均年収は女性が男性を若干上回っている、とも紹介されている。

ニューヨークタイムズワシントンポストの記事は、いつも数多くのコメントが寄せらる。これも面白い。今朝のワシントンポストに寄せられたものをいくつか拾ってみる。

≫≫ 消費低迷のもとの原因についての言及がないのがおかしい。ブッシュ政権が当時の自民党小泉内閣に、日本人がため込んでいる莫大な貯蓄額を減らし、給与を引き下げるように強要したせいで派遣労働者が増えた。仕事が3ヶ月か6ヶ月先までしかないのにお金が使えるわけない。あのトヨタだってこうした非正規雇用を使っている。自民党が政権を失ったのは理由があることなのだ。(同様な内容の発言はいくつもありました)

≫≫ 親世代は若者たちに頑張って稼いで出世して、物質的な豊かさを享受するよう鼓舞してきたが、その結果、日本は機能不全に陥って伝統的な価値を見失い、アメリカみたいに分不相応の消費をするようになっていった。親の世代と違う暮らしを模索するのは、消費習慣から覚醒するプロセスで、家族との時間を持てたり伝統の価値を見直すことになるなら、新しい道を模索することは賢いことだ。

≫≫ 現在の不況を体験しているアメリカの子供たちも、やがて同じように浪費をしなくなるんじゃないか?

≫≫ 親の世代と違って物質的な豊かさは幸せをもたらさないと気づいたんじゃないの。そのどこが問題なわけ? 彼らのほうが親世代より幸せなんじゃない?

≫≫ 東京でそれができるなら、ロサンゼルスでもロンドンでも北京でもできるんじゃないか? 世界の若者よ、連帯しよう!

アメリカより先にバブルが弾けて景気が低迷し、デフレが深刻化している日本は、アメリカ社会の先行きを映す鏡のように思われている。アメリカでも、消費を控えて貯蓄に走る若い世代が増えて問題になっているらしく、最近、経済学者ポール・クルーグマンの講演の一部をネットで見たが、「アメリカ経済のサプライサイドに問題はない。問題は消費者がお金を使わないことだ」と話していた。アメリカ政府が需要を喚起する政策をとる必要がある、というのが結論だった。

経済分析についてはさておき、ニューヨークタイムズワシントンポストアメリカで最も権威のある2つの新聞で立て続けに1面にこうした記事が載った。アメリカも丹念に新聞を読む層はいまや少数派だが、この2紙の論調はやがて数多くの世界のニュースに波及していって、やがて日本のイメージとして定着していくはず。どうだろう?

そうそうコメントでこんなのもあった。
≫≫中国がほくそ笑んでいるぞ。