三連休 中間選挙やら中国やら

10月9〜11日は、日本は体育の日の三連休ですが、アメリカはコロンブス・デーの三連休。穏やかな秋晴れの連休でした。

アメリカは11月2日に中間選挙が迫っていてテレビは選挙CMが目立つ。対立候補の政策の非をあげつらうネガティブキャンペーンが多くて、見ていて気持ちのいいものではないが、批判の矛先が対立候補だけでないCMが増えているという記事が、昨日のニューヨークタイムズ(NYT)日曜版に載っていた。

上院の1/3、下院の全議席、36州の州知事などの選挙が一斉に行われる今年の中間選挙の争点は、何と言っても経済問題。特に相変わらず失業率が高く雇用情勢が改善しない状況を受けて、責任のなすりあいになっている。民主党は、過去のブッシュ共和党時代の政策がアメリカから雇用創出の機会を奪っていると共和党の政策を非難し、一方、共和党は、現政権の経済政策が失敗して雇用が改善しないと批判する。

NYTによると、少なくとも29人の候補者が、対立候補の政策が中国寄りで、その結果アメリカの雇用が中国に奪われて失業者が増えているという内容の選挙CMを展開しているという。中国をスケープゴートにした選挙CMが増えている、というワケ。

そのひとつ。オハイオ州選出の下院議員ザック・スペースは対立候補共和党ボブ・ギブスが自由貿易支持者で、そのせいでオハイオ州から9万1000人分の雇用が中国に流れ、中国は喜んでいると「謝謝」と漢字で中国語の入るCMをオンエア中。
http://www.youtube.com/user/ibackzack#p/a/u/0/agoelZyV7nE

一方、ウエスト・ヴァージニア州共和党、スパイク・メイナード候補は、オバマ政権下で風力発電装置の生産を中国に発注する法案を支持したと民主党対立候補を非難する。
http://www.youtube.com/user/SpikeMaynardCongress#p/u/0/k9NGXfB7PxA

このところ日中関係は緊張が続いているが、アメリカと中国の関係は、ずっと神経戦のような緊張関係の中にある。アメリカ人にしてみれば、Googleを撤退させた中国政府の規制や今回のノーベル平和賞の問題を見るにつけ、もともと共産主義アレルギーのある国民性なので、自由な言論が認められていない中国に対しては警戒心が強い。そこへもってきて、アメリカの雇用が(民主党によれば)240万人分も中国に奪われていると大々的にテレビでCMが流れれば、ますます反中国感情が煽られる。
http://www.dscc.org/moved

240万人分の雇用というのは大げさな数字で、実際には、香港や台湾、韓国にあった生産拠点を中国に移したアメリカ企業が多いので、直近の数年でそれだけの雇用が中国に奪われたわけではないとNYTは説明しているが、Made in Chinaばかりが目につく日常のなかでは「雇用が奪われた感」は皮膚感覚で納得してしまう。

記事の中にも出てくるが、1980年代に日本車の台頭をめぐって日本バッシングになったのと状況が似ている。日本の自動車メーカーはその後、アメリカ工場を作ってアメリカの雇用創出に貢献したわけだが、中国に奪われた雇用とは、もともとアメリカ企業が生産拠点を海外に移したもの。中国企業が奪ったわけではない。その辺は事情が違うわけで、見当違いな中国バッシングと言えなくもない。

ただ、経済成長を笠に着て居丈高な振る舞いの目立つ中国に、アメリカのみならず世界が神経質になっている。こちらで外交を扱う国務省務めの友人など政府職員の人たちと話をすると(私が日本人なのでリップサービスも若干入っているが)、中国が力を持ちすぎては世界中が困惑する。アメリカも周辺アジア各国も、日本にアジアのリーダーの役割を期待しているはずだが、日本にはそのつもりはないのだろうか、などと聞かれてしまうことがある。

「日本にそのつもりはないのだろうか」という質問が出るのは、日本がアジアのリーダーの役割を果たしているとは見えないからだ。 本当に残念ながら、返事に窮する。そのつもりがないわけではないのだけれど、どうやったらいいか分からないのかな... 外交、へただからねえ、などと煮え切らない答えをするはめになる。

そうそう、話はそれていきますが、日本の外務省職員や外交官は、東大(or超有名大)→国家公務員試験→外務省の純粋培養スタッフですよね。一方、アメリ国務省職員のほとんどが、国務省で働く前に別の仕事を経験している。 政府職員の採用には、多様性のある人材を集めるという方針があるそうだ。

インド担当の女性は、元はUnited Airlineのフライトアテンダント。現在アフリカ担当の男性の元の職場はバンク・オブ・アメリカ。ソフトウエア開発の仕事をした後に国務省という人や、あるいはヨーロッパ数カ国で英語を教える仕事をした後に国務省に入って北欧担当になったという人も。それぞれタフな民間の仕事で培った技能や交渉術はとても役に立つという。

ワシントンの国務省ビルに働く人1000人。さまざまな才能を持った人たちが集まる職場は、とてもCompetitiveな(競争の激しい)職場だという。仕事で人に会う機会がない限りはランチは机で仕事をしながら済ます。いつ誰に会ってプロモートのチャンスがめぐってくるか分からないから、ちょっとコーヒーを買いに行くときも、きちんとジャケットを着ている、と仲良しの友人Yvetteは打ち明けてくれた。

こういう人たちの中で切磋琢磨され、階段を上がっていったトップクラスが相手なのだから、日本の純粋培養・世間知らず外交官がかなうわけないかもと思ってしまう。

あああ、中国が選挙CMでスケープゴートにされているという話題で書き始めたのに、なんか別の話で終わってしまった。まとまりがつかない!