世界でいちばん働きたい会社は?

The World’s Most Attractive Employers 2010

就職・採用コンサルティングと市場調査のUniversumが、世界12カ国の学生13万人を対象に行った「働きたい会社ランキング2010年版」を発表し、さまざまなメディアで取り上げられている。グローバル企業の企業イメージ調査のようなものなのだが、これから社会に出て力を発揮したい学生たちが、どんな企業や分野に可能性を感じているかトレンドが分かって、ちょっと面白い。

世界12カ国とは、アメリカ、日本、中国、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、スペイン、ブラジル、カナダ、インド、ロシア。調査対象となったのは「世界的に高い評価を得ている学校で学位取得を目指している学生」とのことなので、かなりの有名大学・大学院・ビジネススクールの学生たちに調査をかけたようだ。学生たちは働いてみたいと思っている会社を5つまで回答するという調査を集計したもの。

「ビジネス系TOP50」と「エンジニア系TOP50」が発表されて、どちらも1位はGoogle。ランキングを伝える経済ニュースのBloombergの記事は「食事も散髪もタダ、職場に愛犬を連れてきてもOKなど独特の企業文化が学生に評価されている」と伝え、「世界を変える課題に取り組んでいることが肌で感じられる職場」というGoogleの採用担当者のコメントを載せている。

ビジネス系2〜5位は、KPMG, Ernest &Young, PricewaterhouseCoopers, Deloitte。ビジネスの世界で『ビッグ4』と呼ばれる会計監査法人が並んだ。2010年の特徴は「会計監査法人の台頭」だと、どのニュースも報じている。

「accounting firm」あるいは日本語で「会計事務所」と言ってしまうとビッグ4の雰囲気は伝わらないかもしれない。最近は「auditing firm」と呼ばれることも多く、全世界にネットワークを持ち、会計監査から企業のファイナンスをベースに企業経営全般のコンサルティングまで行うビッグビジネスになっている分野だ。

学生たちがauditing firmを希望する大きな要因が、研修などトレーニングのシステムが充実していること。才能を磨いてくれるチャンスがあること、さらに、柔軟な働き方が出来る制度があることにも魅力を感じていると、Universumのレポートは指摘する。

今年のランキングでは、銀行&証券、(マッキンゼーとかアクセンチュアなど)経営コンサルティングの会社が軒並みランクを落とし、代わってauditing firmsが上位を独占した、というわけ。アメリカだけでなく世界12カ国の調査結果なので、これは世界的なトレンドと言えるのだと思う。

一方、エンジニア系ランキングは、1位Googleに続いて、マイクロソフトIBM、4位に昨年7位のSonyがランクアップ。5位にはクルマで唯一TOP10入りしたBMW。昨年は50位圏内に入っていなかったAppleが10位に大躍進している。

日本企業は、Sonyが前述のようにエンジニア系で4位、ビジネス系で13位。トヨタがエンジニア系18位、ビジネス系41位。トヨタは前年の圏外から大躍進と言える。リコール騒ぎの結果、よりオープンな企業を目指すと社長が宣言したことで評価が高まっているのかもしれない。日本企業は、この2社のみ。

クルマは、5位BMW以外にランクされているフォルクスワーゲントヨタ、フォード、GMの4社すべてが、昨年の50位圏外からランクアップ(エンジニア系)。代替エネルギー車の開発など次世代に向けた開発競争が活況を呈するクルマ業界が、あらためて成長分野と見られていることが興味深い。

2010年のランキングでは、史上初めて中国企業が50位内に入った。2004年にIBMからパソコン部門を買収したLenovoがエンジニア部門で44位に入っている。

技術面でも経営手法でも変化の激しい時代は、世界中の優秀で柔軟な才能をリクルートしていかないと企業は生き残れない。このランキングに載ること、つまり世界の学生たちに魅力的な企業と思われることは、グローバル企業にとってかなり大切なことなのだろう。

ランキング詳細はこちらで見られます。
http://universumglobal.com/IDEAL-Employer-Rankings/Global-Top-50