Oh deer! 後日談

8月の始めにカントリーミュージックの聖地ナッシュビルに遊びに行った話は以前に書いた。その帰り道で、鹿と遭遇。クルマが壊れてしまった余計なおまけのことも書いた。

その後日談。あれから6週間以上たって今週、ようやくクルマが戻ってきた。その間に、日本から私の友人や主人の姉夫婦が遊びに来て、9月に入って涼しくなり、主人はウイーンに出張に行って、私もあれこれ忙しく...


鹿と衝突してクルマをレッカー車でテネシー州ノックスビルという町のVolvoショップまで運んでもらったのは8月7日のこと。土曜日の午後で修理部門は翌週まで開かない。その日はクルマを預け、レンタカーを借りて、はるばる家まで帰ってきた。

私たちも、Volvoの人たちも、ラジエターに穴が開いたのとヘッドランプが壊れたくらいの修理だと思っていたので、また来週ですね、くらいの感じで別れた。

翌週早々に連絡してみると、ボディの修理が必要なのでボディショップにクルマを移動すると言う。ボディショップ(日本でいう板金工場)の名前が、Tennessee Collision だと。テネシー衝突? あんまりな名前じゃない?

そのTennessee Collisionのグラハムによると、全部のパーツが数日中に無事に揃えば、ボディの修理とペインティングを合わせて10営業日、翌週末までにはなんとかしたい、という話だった。

しかたなく、テネシーナンバーのレンタカーを借りたまま暮らし、翌週末にまた連絡してみる。「小さな部品なんだけど2つだけ届いていないんだ。来週半ばかなあ〜」

翌週半ば、再び連絡。「ようやく部品が揃って、いま作業中。作業が終わり次第、テストドライブして確認するから、夕方連絡するよ」

夕方。なかなか連絡がこないので、こちらから電話する。「う〜ん。見た目は完璧なんだけど、走ってみると、パワーが出ないんだ。エンジンに問題があるんじゃないかな。Volvoにクルマを戻して向こうで見てもらうから、数日中にVolvoから連絡がいくと思うよ」

翌日、Volvoに電話を入れる。「Tennessee Collisionから連絡は受けてるけど、まだクルマが届いていないのよ。明日届くはずだから、そしたらエンジンを診断してみるから」ちなみにVolvoのメカニック担当はバニーという名の女性。バニーガールのバニーだ。本人も笑いながらそう言っていた。(クルマ引き取りの時に会ったら「メカのことなら任せてよ」という感じの切れ者の中年女性だった)

この時点で、8月末。日本から友人や兄夫婦が遊びに来て、私たちも、もうどうにでもなれという感じで対応をほおっておいた。

結局、Volvoから診断結果の連絡があったのは、翌週の半ばだった。危惧していたとおり、エンジンに問題があるという。エンジン内部が水浸しになっていたそうだ。解決方法は二つ。ひとつは、エンジンを分解して中を掃除・修理して、もとに戻すーーこれには、時間がかかる(加えて、アメリカのメカニックの腕を信用していいか)。もうひとつは、高くつくがエンジンの交換。中古のエンジンを探してくれるという。

観念してエンジンの交換を依頼する。その日のうちに回答が来て、同じくらいの走行距離のエンジンが見つかったという。向こうのクルマからエンジンを外して運んでくるのに1週間。エンジンの交換その他で1週間、合わせて2週間かかる。

修理完了日は、主人のヨーロッパ出張に重なっていた。主人が出張から帰り、出張レポートやら精算やら残務を済ませ、私の予定のない日を選んで、ようやくクルマを取りに行けることになったのが、9月22日。鹿と遭遇したあの日から46日経っていた。

早朝4時、借りっぱなしだったレンタカー、フォード・フュージョンで家を出る。ヴァージニア州アパラチア山脈の西側を走る高速道81号線をひたすら走っていく。8月には緑にきらめいていた森林は、すでに紅葉が始まっていた。約500マイルの道程。ノックスビルのVolvo到着、11時50分。久々に対面した我が家のVolvoはボディをペイントしなおしたせいで、妙にすました顔で鎮座していた。

レンタカーを返しにいって、今度はVolvoで家路に着いたのが午後1時過ぎ。8時間かけて走ってきた道を、再び8時間かけて帰って行く。

朝4時過ぎに走ったときには、西の空に低く見えていたほぼ満月の月が、帰路の終盤には東の空に上がっていく。午後9時30分、無事なんとか帰宅。朝食がバーガーキングのブレックファーストサンド。昼食はWendy’sのサラダとチーズバーガー。さすがにファーストフードを2回続けると3回目を食べる元気はなく、家に帰って冷凍ご飯を温めてお茶漬け。

1日で1000マイル=1600キロのドライブは、二人で交替しながら走ったにしても、一日の走行距離新記録。Oh deer!な経験の後日談は、こうしてようやく終わったのでした。まったくもって貴重な体験ではあったけど、ホントに長かったぞ!