Music Row

ダウンタウンからは数マイル離れたところに、通称ミュージック・ロウという音楽関係の会社が集まっている一角があるというので行ってみた。市内を斜めに走る2本の道、16th Streetと17th Streetの一部分なのだが、住所表示がそこだけMusic Square WestとMusic Square Eastに変わる。

「音楽関係の会社が並んでいる」と言われたらビルが連なっている風景を思い浮かべるが、ここはむしろ閑静な住宅街。ビルといってもせいぜい2階か3階立ての建物と、こぢんまりした住宅が並ぶ。

一番大きなビルは、音楽関係者の業界団体で著作権の監視をしているASCAP(The American Society of Composers, Authors and Publishers)。Sony MusicとかEMIなどなじみの名前に混じって××Music、○○Entertainmentといった音楽プロダクションが多い。面白いナと思ったのが、会計事務所や法律事務所が「○○さん、No.1ヒットおめでとう!」など自社の抱えるタレントがヒットを飛ばすとそのお祝いメッセージを大きな看板にして出していること(宣伝ですね)。

戸建ての住宅の多くはレコーディングスタジオになっていた。最近は録音機材が小さくて性能がいいので、普通の住居を改造してスタジオにしているところが多いのだとか。「こんな小さな家だけど、ビッグネームがレコーディングにこもっていることも多いんだよ」と初日の朝に乗ったお手軽市内観光ツアー(所要時間1時間、一人12ドル)のガイド兼運転手は説明してくれた。

その昔エルビス・プレスリーが数々のヒット曲を録音したことで有名になったRCAのStudio Bもこのあたりにあって、今はHall of Fameから見学ツアーが出ている。


炎天下のMusic Squareを歩き疲れた頃、ギターを抱えた人形と「Welcome Country Music Fans」と書かれた看板の出ているBobby’sという店を発見。外からは開店しているかどうか分からず、そっとドアを開けてみたら、冷房の効いた薄暗い店内のカウンターに常連客が数人とその相手をしている、いかにも南部のおばさんという感じの店員がいて「外は暑いでしょ、いらっしゃい」と歓迎してくれた。

冷たいコーラを飲みながら話を聞くと、もう32年も前からやっている店とのこと。夜にはバンドが入って賑わうのだろう、一角はドラムやアンプが置かれたステージになっていた。以前はこのMusic SquareにHall of Fameがあったので観光客も多かったけど、今はみんなダウンタウンに移転したので、静かになったとか。