急成長中のネットビジネス GrouponとかPandoraとか

統計とかデータとか妙に好きなので、毎日ひとつずつ最新データのチャートをメールで送ってくるBusiness InsiderというサイトのChart of the Dayいうデータサービスを利用している。数日前に届いたデータで、今年の第1四半期に比べて、第2四半期に株価が急上昇したネット企業のランキングがあった。つまり、今アメリカで、投資家がお金を出したがっている最もホットなネットサービスの顔ぶれです。紹介してみようと思います。長くなりますが。

まずはGrouponというサービス。GroupとCouponをかけ合わせた名前から推定できるように、時間を制限して、大幅に割引された商品やサービスのクーポンを、ある程度の人数でまとめて購入するという仕組み。全米の都市ごとにエリアを区切って、全米規模で運営されている。

まず、登録するときに自分の住んでいる地域を指定する。すると毎日その地域で最も「お得なお買い物情報」が提供される。例えば、ある日は、クルマのメンテナンスが、洗車とオイル交換とタイヤのローテーションで通常50ドル相当を25ドル、50%引きのクーポンが紹介された。今日のお買い得は、人気の子供服ショップの50ドル相当の商品が25ドルになるクーポン。これらクーポンを買おうと思ったら「BUY」ボタンをクリックする。それぞれのDEAL(お買い得品)は30人とか50人とか設定数以上の「買い」が入らないと成立しない。めでたくDEALが成立したら、登録してあるクレジットカードで決済されメールでクーポンが届く。

消費者にとっては安くものが買え、会社・お店にとっては顧客数が確保されるので値引きしても充分に儲かる。間を取り持つGrouponはマージンを取るので儲かる。と誰にもメリットのある経済構造が成立している。例で紹介したクルマのメンテサービスは、50人で成立するところを、私が見たときは266人が「buy」していた。

Grouponの対象都市は急速に全米に広まっているだけでなく、世界中でサービスがスタートしている。ユーザーは、Twitterで仲間に情報を流して共同購入者を募集したり、クーポンを友達に送ることもできて、利用者のネットワークがどんどん広がっている。もともと通販社会なのでネットでものを買うことに抵抗はないし、「今日一番のお買い得」なんて情報が毎日届くと、必要じゃなくても、そのうち使うからと思って買ってしまいそう。日本でも似たシステムの共同購入サイトが出てきているようです。

株価が急上昇しているネット系ビジネス2位は、Gilt Group。これも会員制のショッピングサイトだが、高級ブランド品をメンバーだけのお買い得価格で、というファションに特化したビジネス。このビジネスは日本でも展開している。

3位は、ネットラジオのPandora。数年前からあるサービスですが、iPadアプリが登場したので私も使っています。アカウントを作って好きなアーティストや曲を登録すると、自分専用のステーションが出来て、そのジャンルの音楽がエンドレスで途中に宣伝もDJもなく延々と聴けます。私は「Beatles」で自分のステーションを作ったのですが、Beatlesを中心にけっこう幅広い音楽が聴けて飽きないです。PCで仕事しているときに、そばにiPad をおいてPandoraで音楽を流しておく。音質が良いわけじゃないですがBGMとしては申し分ない(今はビリー・ジョエルの曲が流れてます)。

4位はZynga。この会社はSNSFacebookの中で遊べるゲームを運営している。特に人気なのがFarmVilleという農場経営ゲーム。最近とても話題で、この10日くらいの間にニューヨークタイムスで2回もFarmVilleに関する記事を見かけた。

こちらでアメリカ人の友人とつきあうには、SNSFacebookにアカウントを持たないとつきあいにならない人が何人もいて、私もFacebookにアカウントを持っているので、試しに遊んでみたら、けっこうはまった。自分の土地に畑を耕して作物を育てて、実ったら収穫して、その繰り返しなんですが、やっていくとレベルが上がっていって植えられる作物の種類が増え、買える木や動物や建物が増えていく。レベルが全部で90まであり、私はやっとレベル10。クランベリーが植えられるようになりました。自分の成果をFacebook友達に伝えたり、友達の農場にギフトを贈ったりもできる。現在アクティブユーザーが2000万人を超え、大手のスーパーと組んで、ヴァーチャルで育てた作物を実物で手にする仕組みを準備中と伝えられている。

5位は、日本語サイトもありますが技術系ブログニュースのTechCrunch。TechCrunch TVを立ち上げるという発表があったので注目が高まって株価が上昇しているのだと思います。私も便利に利用しているニュースで、つい昨日アメリカの著作権庁が発表した「著作権の範囲を大幅に緩和する決定」についてもTechCrunchが分かりやすかった。

話はそれますが、この決定は、教育や批評が目的なら正当な範囲でDVDのコピーガードを外したり、メーカーが制限を加えている機能をjeilbreak(脱獄と日本語では呼ばれるらしい)しても著作権違反に当たらないという内容で、TechCrunchはこれを大事件だと伝えている。メーカーがダメだと言っていることを、法律では違反に当たらないという決定ですから、事件ですね。

さらに話はそれて恐縮ですが、「著作権庁」と訳されているU.S. Copyright Officeは、Library of Congress議会図書館の中にある機能。議会図書館は、日本の国立国会図書館に当たるところで、アメリカで発行されるあらゆる出版物だけでなく世界の出版物を集めて保管しているところ。この本来の機能に加えて、アメリカの著作権についての決定を下す権限を持っている。さらに議会図書館は、ポピュラー音楽の発展に寄与した音楽家に贈られる”ガーシュイン賞”という賞も運営する。この賞はまだ3人しか受けていなくて、第1回がポール・サイモンサイモン&ガーファンクル)、第2回がスティービー・ワンダー、そして第3回が6月始めにホワイトハウスで授賞式コンサートが行われたのだけど、受賞したのが(アメリカ人でない)ポール・マッカートニー

そんなわけでLibrary of Congress議会図書館、なんだかリベラルな政府機関という印象です。ガーシュイン賞コンサート中継が、2ヶ月も経って今夜放送されました。ポールはオバマ大統領から賞を受けて、ご機嫌でした。「賞を受けることも名誉だが、この大統領からもらえたことが素晴らしい」と言ってました。

話を本題にもどして、株価急上昇中の5つのネットサービス、アカウントを持っていないとアクセスが出来なかったり、アメリカ国外からのアクセスを制限しているところがあるのでリンクを貼っていませんが、名称は正確に記したつもりなので、興味があったらGoogleしてみてください。