クリーブランドに行ってきました

日本・デンマーク戦。やりましたね、とても面白いゲームだった。
アメリカの解説は、本田を「ゴールばかりでなく、あらゆる場面でクリエイティブで素晴らしい」と絶賛。日本をexciting team to watch(見ていてワクワクするチーム)と持ち上げている。

そんなわけで、すっかりワールドカップ漬けの毎日ですが、それでも、平日に2日の休みがとれたので、先週クリーブランドまで行ってきました。クリーブランドオハイオ州北部、五大湖の一番南にあるエリー湖に面した町。

首都ワシントン郊外のバージニア州北部の我が家からは、お隣のメリーランド州を抜け、ペンシルベニア州を東西に貫く「ペンシルベニア・ターンパイク」(有料道路10ドル30セント)を走って鉄の町ピッツバーグをかすめ、オハイオ州に入ると「オハイオ・ターンパイク」(有料道路3ドル25セント)を走っていく。途中2回の休憩を含めて7時間のドライブ。約600キロ。アメリカではさほどのロングドライブではない。早朝7時にスタートして、クリーブランド着2時頃。

クリーブランドは、20世紀半ばまでは東部の大都市に近く、五大湖に面した交通の要所として重工業を中心に発展した産業都市だったが、重工業が衰退するにつれて活気がなくなり、今では「アメリカの景気のよくない町」の10本指に入るようになってしまったとか。

そんなクリーブランドに何をしに行ったかというと、エリー湖の湖岸に「Rock and Roll Hall of Fame」(日本語訳は「ロックの殿堂」ですが、なんとなく陳腐に聞こえてならないので英語のままいきます)というMuseumがある。


Rock and Rollの町といえる場所は、アメリカにいくつもある。
例えば、エルビス・プレスリーテネシー州メンフィス、R&Dだったらモータウン(=自動車の町)ミシガン州デトロイト。西海岸のロサンゼルス、あるいはサンフランシスコ周辺も数多くのロックスターを輩出している。あるいは、1969年にWoodstockのロックフェスティバルをやったニューヨーク州郊外でもいい。でも、クリーブランド? 

クリーブランドで何が生まれたかというと実は「Rock and Roll」という言葉そのものが、ここで生まれている。だからここに「Rock and Roll Hall of Fame」が作られたというわけ。

1950〜60年代のクリーブランド。まだ重工業で町が潤い、人が集まってくる町だった。特に南部から黒人や低所得者層が流入していた。というのも、奴隷制はとうの昔に廃止されたとはいえ差別の残る南部に比べて、オハイオは州が出来た当初からFree State。奴隷制を認めない自由の州だった。しかも南部の州から一番近いFree Stateのひとつ。
Free Stateの誇りは、エリー湖畔の公園におかれた巨大な「FREE」の文字のスタンプの彫刻にも感じられる。


さて当時のクリーブランドの若者たちは、カントリーとリズム&ブルースが混じったビートの利いた音楽に夢中で、中心部のレコードショップには常に人が溢れていたという。1950年代初めにクリーブランドのAMラジオ局WJWの人気ディスクジョッキー、アラン・フリードがこの音楽を「Rock ‘n’ roll」と呼んだのが、ロックンロールの始まり。
エルビス・プレスリーを北部の州で始めて流したのもこのラジオ局だったそうだ。

Rock and Roll Hall of Fameに殿堂入りしたミュージシャンのリストを見ると「え、これも Rock ‘n’ rollに入れちゃうの?」と思うようなミュージシャンもいる。(受賞者一覧が日本語Wikipediaにあります) http://ja.wikipedia.org/wiki/ロックの殿堂入り受賞者の一覧

例えばプラターズも、ボブ・マーリーも、ブレンダ・リーも、ジェームス・テイラーも、マイルス・デイビスまで殿堂入りしている。ここでのRock ‘n’ rollの定義は「古い因習にとらわれず自由な発想の音楽でその時代の若者たちから支持されたもの」くらいの緩やかなものだ。なお殿堂入りは25年以上の活動実績のあるミュージシャンから選ばれるとか。

さて、ガラス張りのピラミッド(ルーブルのピラミッドに似ている)型のRock and Roll Hall of Fame Museumは入場料20ドル。最初にロックンロールの誕生にまつわる15分程度のムービーを2本見て、展示へ。時代と地域に分かれた展示の他、プレスリービートルズなど超有名ミュージシャンはそれぞれのコーナーがあって、衣装やギターや、ミュージシャン手書きの作曲作詞メモなど実に様々なものが展示されている。それぞれのコーナーで音楽と映像も見られるようになっていて、じっくり見ようと思ったらかなり時間がかかる。

建物は5階建て。3階のシアターでは、過去に殿堂入りしたミュージシャンの演奏をダイジェストでつないだムービーが見られる。約70分、過去の有名受賞者の演奏とコメントを実に巧みに編集してある映像で、70分があっという間。チャック・ペリーに始まり、U2やPoliceまで、一部パンクロック系を除いて、ほとんど一緒に歌えてしまう自分にビックリした。

1階には広いミュージアムショップがある(こだけなら入場料を払わずに入れる)。Tシャツ、キーホルダーやマグネットなどのおみやげもの、CD、DVD、書籍、カードなどの他、殿堂入りしたミュージシャンサイン入りのギターとか(もちろん20万とかしますけど)、レアものもけっこうあって、ショップだけで1時間以上を費やしたような...

クリーブランドは旅行者が気軽に立ち寄れるような町ではないので、実はこのRock and Roll Hall of Fameはニューヨークに分館があります。展示物は大分違うようですが、見られる映像は一緒で、ショップで変えるものもあまり変わりないらしい。

でもFree Stateオハイオの雰囲気を味わえたのと五大湖の湖岸に立てたこと、Rock ‘n’ rollを聴きながらのロングドライブは、楽しい2日間でした。

それにしても、日本代表、決勝トーナメント進出。ワールドカップ漬けの日々は続く...