理系に特化したした小学校

Mac5102010-06-06

散歩で時々通りがかる住宅街の一角に、Arlington Science Focus Schoolという学校があります。略称ASFS。
Science(科学)にFocus(特化)した学校。この学校、幼稚園と小学校なんです。

子供たちが毎日、実験や観察をしながらわいわい楽しく過ごす場所という雰囲気。ウエブサイトで調べると、例えば「Investigation Station」と名付けられた実験室で各学年が取り組んでいることが紹介されている。

幼稚園児は、個体・液体・気体について:水をいろんな容器に流し込んでみたり、高低差があるところでは低いところに水が集まる性質を実験していた。

1年生は「化学者の道具」の使い方を学ぶ。試験官をもったり、スポイトで水を垂らしたりして遊んでいた。

2年生は、ミニチュアの都市を作って、そこに扇風機で強風を送ると、風がどんな影響を与えるか観察していた。

3年生は、レバーやてこの原理を応用した「飛び出すカード」を作っていた。

4年生は、電球に電気を通して点灯させる実験。

5年生は、海底の地形と水面の関係。自分で作った海底と海(プラスチックの箱の底に海底を作って水を入れたもの)を揺すって表面の動きを観察して地形図を作るーーなんていうことをしていた。

楽しそうですよね。この学校に通っていたら、毎日楽しくてしょうがないでしょうね。実験や観察を通してものごとを深く考えたり、分析したり、問題を解決したり、考える力を育んで、科学に強い子供たちを育てるのが、この学校の理念。

小学校や幼稚園から科学に重点をおいた教育をするというのは、アメリカの中でも限られた実験校らしいのですが、調べてみると、science, technology, mathematicsなど名前はいろいろですが、けっこう各地にある。

日本では、理科離れが問題になっていますが、アメリカでも教育の質の低下は問題にされている。国内に優秀な科学者は大勢いるが、実はほとんどが外国からアメリカに仕事のために移住してきた人たちで、アメリカ人が優秀なわけではないのだ、と言われていたりします。理系に強い子供たちを育てる目的でこうした実験校が作られ、実績をあげているらしい。

ちなみにこのASFSは、アーリントン郡の公立学校です。登校時間に前をとおると、スクールバスが次々に入ってくるのに加えて、けっこう遠くから通ってくる子供が多いのか、学校周辺は子供を送ってきた親たちの車で渋滞。周辺道路沿いにクルマを停めて、子供を学校の前まで送り届ける親たち、それを出迎える学校のスタッフや先生、小さな学校ですが、朝の時間は周囲が活気づいていました。

何ごとにつけ、ユーザーの評価を集めてランク付けするサイトが出来ているアメリカのこと、学校の評価サイトもちゃんとあって(greatschools.org)、そこで調べてみたら、この学校は、10点満点中の10点と最高ランク。

親たちの評価やコメントは、校長が人の話をちゃんと聞かない、子供に大声を上げる教師がいる、というマイナス評価をした親が二人いた他は、コメントを寄せた十数人が全員満点の評価を加えていた。

3ヶ月かけてワシントン周辺の学校を調査したあげくに、この学校に子供を通わせるために引っ越しをしたという家庭もあった。

格差社会アメリカでは、良い学校に通って、良い大学に行って、社会に出てから良いネットワークを持つことのは重要なこと。いくつになっても出身大学のTシャツやトレーナーを着て歩いている人は多い。(愛校心だったり、出身校のフットボールチームの応援の意味があったり、理由はいろいろのようですが)

こういう学歴格差はいやだな、と思う反面、ASFSのような学校は楽しいに違いないし、小学校なんて、みんなこうあるべきだとも思います。

特に理系離れが深刻な日本では、幼稚園や小学校では「授業」ではなくて、こうした実験や観察や物作りの楽しさを教えることが、理系好きな子供たちを育てる早道ですよね。