アメリカ人の英国コンプレックス?

帯番組としてはアメリカ最大視聴率を誇る「American Idol」が今週フィナーレを迎えた。全米数千人の応募者から選考を重ねて、その年、最も人気と実力のある新人歌手を、選考段階は審査員が、TOP12に入ってからは視聴者投票で選ぶ番組だ。今年のAmerican Idolはシカゴ郊外の小さな町でペンキを売っていた24歳の青年、Lee Dewyzeに決まった。

Leeと最後までidolの座を争ったのは、同じ24歳のシングルマザー、Crystal Bowersox。彼女の方が圧倒的に歌は上手いと私は思っていたけれど、最後は人気投票なので、まあ予想どおりの結果。でもCrystalがギターを抱えて歌ったジャニス・ジョップリンのMe and Bobby McGeeは特筆ものでした(YouTubeで検索すれば見られると思います)。

高視聴率番組とはいえ、ここ数年、視聴率が下降傾向のAmerican Idolは、辛口コメントで人気のあったジャッジのサイモン・カウエルSimon Cowellが8年目の今期限りで番組を降りることが決まっていて、来年以降の視聴率回復が危ぶまれている。ほかのジャッジが誉めてもSimon Cowellはいつも辛口のコメントで批評し、観客から盛大なブーイングを浴びることも多かったが、それでも的を得た指摘をし続けてきた。それがこの番組を面白くしている大きな要因だった。

余談だが、就任後しばらくしてからオバマ大統領がトーク番組に出演したことがあって、そのときに「ワシントンはどうですか?」と聞かれて「ワシントンはAmerican Idolみたいなところ」と答えた後「ただ、誰もがSimon Cowellなんだけどね」と言って笑いをとった。大統領職は批判にさらされるものだという例に使われるくらい、Simonの辛口は有名だった。

American Idol」というアメリカのアイドルを選ぶ番組で最も重要なポジションのジャッジだったが、 彼はイギリス人。今日のテーマは、American IdolでもSimon Cowellでもなく、アメリカ人にとっての「イギリス人」について。

American Idol」が終わると、同じチャンネルFOXで「So You Think You Can Dance」というダンスのオーディション番組が始まるが、ここで最も重要なポジションに座るジャッジはナイジェル・リスコーというイギリス人プロデューサーだ。ABCテレビに「Super Nanny」という、親の手に負えない子供がいるアメリカの家庭を訪れて、両親に躾のしかたを教える番組があって、ここに登場するSuper Nannyもイギリス人。アニマルプラネットというペット専門チャンネルには、飼い主の言うことを聞かない犬をしつけるためイギリス人女性のドッグトレーナーが登場する。以前に紹介した「Food Revolution」という番組で、肥満大国アメリカで食習慣を変えるために奮闘するカリスマシェフ、ジェイミー・オリバーもイギリス人だった。

アメリカ人にものを教えるにはイギリス人が必要なのではないかと思いたくなるくらい、指導者・審査員の立場のイギリス人がアメリカのテレビには大勢登場する。アメリカ人の英国コンプレックス?

で、実際にアメリカ人はどう感じているのだろう。海外経験もあって、割と客観的にものを見ていると思える友人二人に聞いてみた。「アメリカ人はイギリス人の言うことなら耳を傾けるってこと?」

「あのブリティッシュ・イングリッシュで喋られると、ものすごく知的に聞こえるのよ」
「私たちより歴史があって、経験があって、頭がいいんだと思っちゃっているんだと思うわ」
などの答えが返ってきた。やっぱり...

それで、ちょっと思ったんだけど、英語を勉強するならアメリカ英語じゃなくてイギリス英語を勉強したらどうだろう。アメリカとビジネスするなら、イギリス訛りの英語で交渉するほうが耳を傾けてもらえるかもしれない、なんてね。あの頭のてっぺんから鼻に抜けるようなブリティッシュな発音を操れたら、アメリカではちょっとカッコいい。

イギリス英語とアメリカ英語の発音の違いが簡単に聴けるサイトがある。
http://www.thefreedictionary.com/
このサイトで単語を調べると単語のあとに星条旗ユニオンジャックのアイコンが出てくる。それぞれのアイコンをクリックすると、アメリカ英語の発音とイギリス英語の発音が聞き比べられる。面白くて検索するたびに両方聞いてしまう。
いや、このサイトはほかにもシソーラス(同義語)の情報も充実していてとても使い勝手がいい。オススメです。