State of Union, Jobs and Salinger

1月27日夜にオバマ大統領の一般教書演説が行われて、例によってネット局・ニュース局すべてが同時生中継になった。日本語では「一般教書演説」だが、英語では「State of Union」、つまり「国の現状」について大統領が議会に説明して見解を述べるという趣旨の演説だ。

余談ながら、これをもじった「State of Onion」というタイトルの、ホワイトハウスのシェフが事件を解決するミステリー小説を最近読んだ(けっこう面白かった)。

で、今年のState of Unionは、支持率の低下やマサチューセッツ州の知事選で50年近く守ってきた民主党議席共和党に持って行かれたなど、最近形勢のよくない大統領がどんな話をするか注目されていた。マサチューセッツの知事選で負けた後に「国民は怒っている」と失業率が好転しない経済状況について、大統領自らが語ったとおり、景気対策、特に失業者対策を前面に押し出した内容になった。

演説内容については、日本のメディアも詳しく伝えているので触れないが、演説後の解説番組でキャスターたちが口を揃えて言っていたのが「今回のState of Unionは、Jobs, jobs, jobs...」という解説。

で、たまたま同じ1月27日、アップルがiPadを発表した。そう、Steve ”Jobs”が登場した!

いや実際、Daily Showというトーク番組があるのですが、そこでは各局のキャスターたちの「Jobs, jobs, jobs」の大合唱シーンをつないだ後に、アップルの発表会でSteve Jobsが登場する映像を出して「期待に応えてJobsが出てきた」とやっていました。

このDaily Showは、ジョン・スチュアートというホストがハイレベルなユーモアを交えて世相を鋭く斬る皮肉の効いたトークで、特に若者&インテリ層に人気が高い。Comedy Centralというコメディー専門チャンネルで夜11時から30分の番組です。(レベルが高すぎてついていけないことがある)

それで、iPadですが、現在は日本のAppleサイトでも詳細が紹介され、Jobsのプレゼンテーションの映像が見られるようになっています(90分ありますが)。15年以上のMacユーザーでADC(開発者会議)に参加していたこともある私としては、この新商品は待っていた。発表当日にアメリカのサイトで詳細情報を受け取れる「Notify Me」に登録しました。サイトが込んでいたのか3回目のトライでようやく登録完了。

Jobsのプレゼンテーションを聴く限り、ベーシックモデル499ドル、オンラインで購入ができて、電話会社との契約とかややこしいことはなし。29ドル99セントで毎月使い放題でWebもメールもテレビ&映画もOK。電子書籍も充実しそうなので、数年とまたずに、学生だったら、このiPadだけ持てば、教科書にもノートにもなり、メールもWebもできて音楽も聴ける。生活シーンが変わるんじゃないかと思います。私もそんなふうに使いたいと思って。やっぱiPhoneでは小さすぎるし、かといってMacBookを持って歩くのは重すぎるので、この手軽さは待っていた。

iPad のプレゼンテーションは、同じ日に行われたオバマ大統領のState of Unionと同じように拍手喝采のなかで始まった。ほぼ1年、病気治療でおもて舞台から遠ざかっていたJobsの復帰戦ということもあって、登場したときには会場総立ちの拍手で迎えられた。

全く違う分野で活躍する二人を比較するのは無理がありますが、ジョブスとオバマ、今だったら、ジョブスの方がずっと社会を変える力を持っているかもしれない。

そうはいってもJobsがアップルを設立したのが1977年。当初は理念だけが先行して実態が追いつかない時代があり、会社を追われた時期もあるし、本当に成功したのはiMaciPod以降の頭に「i」のつく商品を発売するようになってからかもしれない。

かたや33年の長い歴史のなかで自分のスタイルを貫いて成功を収めたJobsと、まったなしの状況でアメリカを率いることになってわずか1年のオバマ。大統領は最大8年しか務められないことを考えると、大統領職は厳しいものですよね。

まあ、そんなことを考えつつ、State of UnionとiPad の発表を見ていましたが、その翌日、D.J.サリンジャーが亡くなったというニュースが流れた。この人も1960年代、若者文化の流れを変えた人。代表作のThe Catcher in the Ryeはアメリカでは長いこと、中学高校で禁止書物だったと報じられた。晩年は社会との接触を断って山奥で一人暮らしだったとか。Bob Dylanが好きだったそうだ。そういえばJobsもiPadのプレゼンのなかでBob Dylanを使っていた。

1月27日。A Perfect Day for Bananafish*だったかな。 (*from Nine Stories by Salinger)