America‘s Hottest Brands:アメリカのヒット商品2009

年末で、今年のヒット商品が発表されていますが、Advertising Age誌による2009年のHottest Brandが発表になりました。AdAge誌のベストブランドは、昨年は50ブランドが選ばれていたのに、今年は40。不況でヒット商品が減ったのか、傾向もずいぶん変わっています。
すごく長くなりますが、ざっとご紹介してみます。オリジナルは期間限定ですが下記に掲載されています。
http://adage.com/article?article_id=140445

コンピュータ&ソフトウエア業界からは、HP Mini Limited Editions。HPのネットブックは大ヒット商品でしたが、これは女性をターゲットにカラフルでお洒落な柄が入ったPC。電気店では販売されず高級百貨店のネットショップで売られ、予測の5倍も売れたとか。
ソフトウエアではAuto-Tuneというサウンド補正ソフト、Turbo Taxという税金計算ソフト。これはWEB版にへの移行が成功した。マイクロソフトgoogle対抗検索エンジンBingも入っていました。

AV機器など機械類は、今年はひとつだけ、Vizio Blue-Ray Player。200ドルを切る安くて性能の良いブルーレイプレーヤー。

自動車業界は不況のどん底の年でしたが、2社が選ばれています。まず、スバル。
スバル・アメリは、アウトドア志向で環境問題に意識があるなど、ターゲットを絞り込んだ展開が成功。Love. It's What Makes a Subaru a Subaruというスローガンで統一されたキャンペーンが好評でした。家庭雑誌や自動車サイトで2009年のベストファミリーカーに選ばれたり、さまざまな賞を獲得しているそうです。アメリカでのシェアは2%と小さいですが、売上げが前年同期比13%増というから、自動車不況のなかでは驚異的。次もスバル、というブランドロイヤリティの高い顧客をしっかり獲得している、と誉められていました。

もうひとつのクルマは、シリコンバレーで作られてまだ市場に800台しか出回っていない電気自動車のTesla Motorsカリフォルニア州知事やハリウッドスター、シリコンバレーのカリスマSEたちが愛用しているそうです。

食品でヒットになったのは、家庭でタコスが簡単に作れるキットのOld El Paso、スーパーWalmartプライベートブランドGreat Value(パッケージを一新して目立つように売り方を変えたとか)、宅配ピザに負けない味を安価に実現した冷凍ピザのDiGiorno
高級ポテトチップのKettle Foodsは、顧客の要望や人気投票で商品ラインナップを細かく調整して人気だそうです。

ドリンクは3ブランド。5 Hour Energyはエネルギー補給飲料。若者向けかと思いきや、40代の疲ても頑張らないといけない、という世代に向けた飲料だそうで、オフィスでの試飲会をこまめに行って売上げを伸ばした。Zicoはココナッツウォーター。ヘルシー志向の女性層などから支持され、昨年2000万ドルから今年3500万ドルへ市場が膨らんだという。
定番ドリンクではMountain Dewが上がっている。いわゆるベビーブーマー層とその子供たちGeneration X層から厚い支持をえて、炭酸飲料全体では2.7%減だった市場で売上げが伸びたとのこと。

アルコールでは、アイリッシュウイスキーJameson。今年で10年連続2桁成長を続けるブランドとか。そういえばアイリッシュパブというのが、とても人気なのです。Pabst Blue Ribbonというビールブランドは、価格の安いビールながら高級イメージを獲得しているそうです。

胃薬のPepto Bismolは108年の歴史を誇るブランド。新しいキャラクターを使ってラインナップの豊富さや安心感をアピールしてシェアを伸ばしたそうです。

化粧品ではCoverGirlが好調。ライバルのメイベリンからシェアを奪うことに成功し、特にビッグブラシを導入したマスカラでは3.5%のシェア増。

Tria Beautyという除毛機は795ドルという高額商品だが、エステに通って除毛すれば5000〜7000ドルかかるところを10分の1程度で済む。不況が幸いした商品とのこと。この商品は日本でも認可になって販売されているそうです。

Ped Eggという「かかと掏り」は、通販商品を売ることで有名だったビリー・メイズを使ったCMで大成功(でもビリー・メイズが今年急死しちゃったのよね)。2年で3000万個を売ったそうです(私も持っています)。
Off!というのは携帯蚊取り。虫除けスプレーを肌にかけることを嫌がる女性層、母親層に大好評でした(日本には前からありますよね)。

衣料品では、Bonobos(ネット販売専門のズボン)とElizabeth and Jamesヤングアダルト向き、ちょっと高級志向)というブランドが受けています。
衣料といえるかどうか微妙ですが、とにかく話題になったのがSnuggie。袖のついた毛布で、アメリカの冬は寒いところが多いですが、このスナギーさえあれば冬を暖かく過ごせます、というCMと、300ものニュースショーで取り上げられた話題性で初年度500万枚を売ったとか。
ナイキのシューズでマイケル・ジョーダンJordan Brandは、ナイキのマークが入らない。ナイキ直営店の10店に1店しか扱わず数量限定。その希少価値でヒット。

ゲーム関連は4ブランド。World of GooというWiiのゲームはシンプルだが頭を使うゲーム。2K SportsはゲームになったNBABeatles Rock Bandは、9月に発売されたBeatlesのデジタルアルバムと合わせて発売されたBeatlesゲーム。
Zyngaというゲームサイトは、Facebook My Spaceソーシャルメディアを使ってネット上でゲームができる。iPhoneなどスマートフォンで友達と遊べるので、1日5000万人が利用しているという。

マスコミ・メディア関連では、スペイン語放送サービスのCableLathino。Latinoへのサービスはこれからもっと注目されると思います。
書店のBarnes & NobleiPhoneコンテンツを開発してケータイで本が読めるサービスを開始。積極的なデジタル戦略が書店への集客数も増やしているという。
先日ブログで報告したダン・ブラウンの最新作The Lost Symbolは、初版500万部、5週間で実売350万部の破格の大ヒット。発売前からウエブで謎解きにチャレンジできたり事前キャンペーンも綿密だったようです。

ネットビジネスの成功例をふたつ。ひとつは日本にも25万人の会員がいるそうですが、Gilt Groupeというブランド品をディスカウントしてネット販売するビジネス。会員制で会員になるには紹介が必要というちょっと排他的なビジネスが受けたみたいですね。
もうひとつはDiaper.comという紙おむつの配送ビジネス。午後6時までの注文なら全米3分の2の地域で翌日配達。24時間365日体勢のカスタマーサービスでライバルに差をつけて利用者が拡大しているとのこと。

航空会社では、Virgin America。ゆったりしたシート、フライト中のネット接続、座席でタッチスクリーンから飲み物や食事を注文でいるシステムを導入して若いプロフェッショナル層に人気が広まっている。
反対に廉価で顧客を増やしているのがJetBlue。格安チケット情報をTwitterFacebookなどのソーシャルメディアで流してビジネスを成功させている。

グレイハウンドが新しく作った長距離バスのBolt Busは、足下がゆったりしたレザーシート、社内でネット接続が使え各座席にはコンセント付き。ビジネス客のニーズを満たしてヒット。1シート1ドルの座席を用意するなど廉価なことでも評判だ。

カーシェアリングZipcarは、必要なときだけクルマを使うという都市生活の新しいコンセプトを提案して1年間で40%も会員を増やした。

カフェチェーンのPaneraは、おいしく食事はしたいけどレストランは高い、という層にしっかり食い込んだ。スープやサラダがおいしくて値段はリーズナブル。レストランと違ってチップを払う必要がない。
一方ハンバーガーチェーンのFive Guysの特徴は、自分で自由にいくらでも乗せられるトッピング。店の雰囲気が良いことも人気だが、これには理由があってsecret shoppersと呼ばれる秘密の採点者が店を訪れて、良い点が取れるとスタッフの給料が上乗せされるという仕組みを導入してサービスの質や質のいいスタッフの確保を実現しているのだそうです。


どうでした? 40ブランド、ビッグネームが少なく「環境」とか「ヘルシー」とか昨年多かった特徴が姿を消しています。今年の特徴は、word-of-mouth「クチコミ」のようです。40ブランドの説明文のうち、このword-of-mouthという言葉が使われたブランドが9つもありました。「クチコミ」といっても今の時代は、ブログやケータイメール、あるいはtwitterとか「デジタルなクチコミ」で評判が一気に広がる。そういうトレンドを積極的に活用したブランドが成功しているようです。