ダン・ブラウン新作 The Lost Symbol

Mac5102009-10-25

ダ・ヴィンチ・コード』のベストセラーで有名なダン・ブラウンの最新作を読み終わった。エライ!と自分を誉めたい!

ダン・ブラウンの作品はだいたい謎解きがテーマ。『ダ・ヴィンチ・コード』はルーブル博物館とパリが舞台、その後の『Angels & Demons:天使と悪魔」はバチカンとローマが舞台で、どちらも壮大な謎解きが繰り広げられる。私はこの前2作とも原書で読んで、本当に疲れた。特にAngels and Demonsは、キリスト教の聖職者が次々残虐な殺され方をしていくのに嫌気がさして、途中で投げ出したっけ。

さて最新作のタイトルは『The Lost Symbol』、今回の舞台はアメリカの首都ワシントンDC。9月中旬に発売になったハードカバーはB5版(週刊誌の大きさ)をほんの少し小さくしたサイズで、全部で509ページある。本を見ただけで尻込みする大作だ。ワシントン周辺はどの本屋も店頭に山積みしていて、ベストセラーになっている。

「ワシントン近郊在住のミステリー好きとしては読んだ方がいいんじゃないの?」と本屋の前を通るたびに夫にけしかけられていた。ある日、行きつけの書店Barns & Noblesの店頭で、30%引き・会員だとさらに10%ディスカウント(会員なのですよ)とあって、ついに購入。さらにこちらの友人たちとの話のなかで「ダン・ブラウンの例の新作を読むことにしたの」と言ってしまった。ああ、口は災いのもと。「どこまで読んだ?」「どうなった?」と聞かれることになる。

そんなこんなで10日ほど前に読み始めて、睡眠時間を削りながら読み進み、先ほど読み終わりました。B5版509ページ。万歳! 偉い!

やがて翻訳されて読む人もいると思うので筋は言いませんが、舞台はワシントンDC。キャピトル(国会議事堂:写真)、議会図書館、モニュメントその他、ワシントン観光の重要スポットが次々に登場して、その由来や隠された謎が紹介される。テーマは、フリーメイソン。12〜13世紀ごろにヨーロッパで発生して世界に広まった、この会員組織のことを少し知らないと、あまり面白くないかもしれない。秘密結社と扱われ、さまざまな事件の背後にこの団体がいると言われることがあるが、一切の反論をしないのた方針だそうで、真偽はまったく分からない。(日本の現首相のおじいさま鳩山一郎氏はフリーメイソンだったそうです)

フリーメイソンの間で代々受け継がれた「古代の謎」を説くカギを記したとされる小さなピラミッド型の置物をめぐるストーリー。ひとつの章が3〜4ページと短く、シーンを転々と変えながら物語はめまぐるしく展開する。ある日の午後7時から翌朝の日の出までの物語が509ページになっているわけです。謎解きは面白い。ラテン語をちょっとかじったことがあったり、あるいは暗号とかMagic Square(魔法陣:縦横斜めの合計がすべて同じになる数字の配列)などパズル好きだとさらに楽しいかも。

作者のダン・ブラウンは、膨大な資料を集め徹底的に調べつくして小説を書いていく人なのだろうと思うが、ちょっと詰めが甘かったなと思うところがある。物語のなかでけっこう重要な役割の登場人物としてCIAの警備局長が出てくるんだけど、日系人の女性で、名前がInoue Sato。Satoがファーストネームなら問題ないけど、Satoはラストネーム、Director Satoと部下から呼ばれる。つまり「さとう・いのうえ」さんという名前の女性なのよね。「いのうえ・さと」だったら良かったのに。彼女は任務遂行のために何ごとも容赦しない厳しい女性として描かれるわけ。それなのに「さとう・いのうえ」では日本語訳のときに、なんというか、かっこ悪いわよね。

まあ、そんなトリビアな面白みもあって、この『The Lost Symbol』は興味深く読みました。最後に明かされるthe lost symbolの正体は、積極的に神を信仰するわけではないけど決して自分が全くの無宗教だとも思っていない私など日本人には、割にすっきり理解というか納得できる結末だと思いました。

翻訳が出たら、ぜひ挑戦してみてください。