政権交代:ニュースサイトのコメントから

民主圧勝自民大敗から一夜明けて、海外メディアがどう伝えているか、日本ではニュースになっていると思いますが、そのニュースに一般の人たちがどんなコメントを寄せているか、これを拾ってみようと思います。

アメリカの(あるいはアメリカに限らず世界の)メディアのネット版には、記事に対してコメントを書くことができ、それが公開されています。日本のメディアでこの機能を持っているところは少なく、これはウエブ進化論の梅田望夫氏が指摘する「日本のウエブの残念なところ」の一部であろうと思いますが、ま、それはさておき。

New York Timesの記事には記事が出てから24時間で500くらいのコメントが集まっています。またリベラル系のネットメディアとして人気の高いThe Huffington Postの記事にはすでに700を超えるコメントがついていました。

http://www.nytimes.com/2009/08/31/world/asia/31japan.html?_r=1&ref=world
NYTのコメントは写真下にあるcommentをクリックしないと見られません

http://www.huffingtonpost.com/2009/08/30/japan-election-results-op_n_272149.html
The Huffington Postの記事は、ミスリーディングだと記事自体の評判はよくないようです。

どちらもアメリカのサイトですが、コメントは世界中から届いています。日本からの投稿もある。こうしたコメント欄は世界の人が議論を戦わせる場で、軽口的なコメントも多いし、否定的に批判するコメントもありますが、一方で真面目に情報を提示して建設的な議論が展開されるコメントも多くて、読み応えがある。

日本のウエブが残念なことをここで云々するより、ある程度の英語力を鍛えて世界の意見が集まる場を楽しむのが健康的ですね。

さて、日本の総選挙のニュースで、まず多く見られた反応が、自民党自由民主党Liberal Democratic Partyの名前に対する大いなる疑問??? 
アメリカでは Republican(Conservative)→ Democrat → Liberal という順序で、保守から革新へ、振り子が移動する。党の名前に Liberal と Democrat と革新的な二つの名称がついているのに、実際には54年間も政権の座に居続けたConservative保守だという自民党という党の実態と名前のギャップに「へえ〜」というコメントが多かった。

「日本ではLiberalの定義がきっと違うのね」と反省しきりのコメントに対して、こんな教育的なコメントがついていた。

自民党が「自由」なのは名前だけ。恥じることはないさ。同じように、国歌社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)は本当は社会主義じゃない。北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国という名前だけど、どこが共和国? オーストラリアで政権を持っている労働党中道左派保守政党の名前は? そう「自由党」というわけさ」

また「大企業よりの保守政党が「自由民主党」と呼ばれるのは皮肉なこと」という記事にはこんなコメントがついていた。
No. It's ironic that US citizens consider liberals to be left-wing. The rest of the world sees liberalism as a form of laissez-faire conservatism.
「いや、皮肉なのは、アメリカ人がリベラル(自由)は「左翼」だと思っていることさ。アメリカ以外の世界中で、リベラリズム自由主義)とは自由放任の保守と考えられている」

また、リベラル系のThe Huffington Postでは、さかんに「世界中で保守の時代が終わろうとしている」という趣旨のコメントが見られました。インドから届いていたコメントでは、

「(日本の選挙結果は)すごい! 今年はまず、インドで最大野党で(アメリカ共和党と手を組んでいた)保守の BJP(インド人民党)が選挙で大敗した。日本でも共和党寄りの自民党が大敗。世界中で保守政党は人々からそっぽを向かれている。この流れが世界の平和と安定をもたらしてくれることを望みたい」

日本に住んでいるアメリカ人からの投稿も。
「日本に住んでいる。この選挙結果は日本にとってものすごく大きなこと。日本人は大きな変化を嫌うけど、国中がいっせいに動いて、長いこと政権にあった与党をひっくり返したというのは、本当に大きな出来事だ」

「これをアジアにおけるオバマ効果と呼ぼう!」

こんな考察を寄せている人も。内容から見て還暦を過ぎた人だろうと思います。
「小さな国土に天然資源は少ないのに経済大国にのし上がった日本は、かつては世界の羨望のまとだった。私が小さい頃のアメリカでは、 今のメイドインチャイナみたいに 本当に多くのものがメイドインジャパンだった。最初は質が悪かったが、やがて最高品質の商品やクルマが日本製に変わっていった。しかし風向きが変われば、やがて中国や韓国などが安い労働力と生産力の向上で日本に取って代わる。これはアメリカにとっても教訓だ。時代が変われば、国を運営する方法も変わらなければならない。保守的な政府にこの役割は果たせない。彼らは本質的に変化に対応できず、現状を維持しようとするからだ。この考察や歴史の教訓を無視することは、自らを危険にさらすことになる」

自民党がなぜ敗北したか、簡単に説明できる。党が疲弊したのだ。リーダーシップは革新的でなくなり、自民党が頼ってきた官僚たちは、現状を維持することは得意かもしれないが、政治的クリエイティビティがないことで有名だ」

「新しい与党連合が最低の結束を維持できれば、日本は良い方向に変わるだろう。そうすれば、その変化のおかげで世界は良い方向に向くだろう」

「さて問題は、新政権に統治力があるか、だ。世界は混乱の中にあり、政府を機能させるには時間がかかる。新政府の幸運を祈るばかりだ」

「ようやく! こうなるまでに長い時間がかかったことが悲しい。自民党は、小泉前首相のもとで何度も方向を変えるチャンスがあった。それなのに3人もの後継者(安倍、福田、麻生)が失敗を重ねたあげく、ようやく国民が立ち上がることになった。この変化を希求する大きなうねりが、日本の経済をここまで長く足踏みさせてきた官僚制度に切り込んでくれることに期待したい。Go! 鳩山!」

「54年は誰にとっても長すぎる。日本の民主主義は、現在より何十年も前のほうがずっと健康的に機能していた」

日本の現状と比較して、アメリカの問題へ議論の軸を持って行く内容のコメントも数多く見られたのですが、そのひとつ。

「少なくとも日本では、すでに一元化された医療保険制度があり、基本的な教育制度がしっかり機能し、新幹線もあるし、刑務所の囚人人口は少ないし、どこへ行っても安全で清潔。 私たち(アメリカ)は、もう少しましになれないの?」


そんなわけで、世界が注目する鳩山政権。これまでの麻生政権は冷やかし半分程度の記事しか出なかったのですが、これからはニュースになることも多く、そのニュースにまたコメントが数多く寄せられていくことを、期待しています。