選挙速報・高見のネット見物

アメリカは、昨日8月29日(土)にエドワード・ケネディ上院議員の葬儀が行われ、夕方ワシントンの議会前からアーリントン墓地へ葬列の道筋に多くの市民が集まって見送った。墓地での埋葬に先立ち、カトリック大司教が語ったお別れのスピーチの中で、先日ローマ法王を訪ねたオバマ大統領にテッド・ケネディが託したという手紙が読み上げられた。

「自分は病気の身で旅立ちの時も近いかもしれないが、すべての人に平等な人権が保障され、すべての人が最高の医療を受けられる医療保険改革を実現するために最後まで戦っていくつもりだ」というような内容。それに対してローマ法王が送ったとされる返信の一部も紹介された。
さらに、ティーンエイジャーの孫たちがお別れの言葉を語り「すべてのアメリカ人に医療を保証するために戦った政治家として記憶されることになるおじいちゃんを誇りに思う」というような内容があった。CNNのコメンテーターは、ケネディ議員は自ら語れなくなった後にも、その声を私たちに届けている、と感心していた。

こちらのメディアはテッド・ケネディの功績と葬儀の様子が主なニュースなので、日本の選挙結果は、まだあまり大きく伝えられていない。

民主党の圧勝というより、自民党の大敗北。すごかったですね。

8月30日(日)は朝7時に起きて、つまり日本時間の30日夜8時ですが、日本のメディアのサイトを開いたら、投票終了時刻とほぼ同時に民主の当確が140議席もついていて、笑ってしまいました。
早朝散歩に行ったり、食事をしたり、洗濯したり、買い物に行ったりする合間に開票の様子を高見の見物。こちら時間の午後2時頃に全議席が確定したようです。朝日・読売・日経・産経・毎日・NHKのサイトを見比べていましたが、HNKが一番分かりやすい開票速報サイトになっていたように思いました。朝日は、情報は一番早いのですが、太平洋を隔てて高速インターネット後進国アメリカで見ていると重たくて、つい別のサイトへ移動したくなる。

まあ、そんなわけで戦後初めて本格的に選挙によって政権交代が実現されたわけで、何となく国民の期待は盛り上がりますね。でも自民党はどうするんだろう。

この結果は、国民がChangeを望んだから実現した訳ですが、自民党では、選挙区で落選した大物議員さんの多くが結局比例区で復活してきて、前回フレッシュな風を感じさせてくれた小泉チルドレンと呼ばれる人たちの大半は落選し、どうにか生き残った自民党には新鮮な魅力がかけらも感じられないというのが、この結果ですよね。小泉ジュニアぐらいですか? 今回新鮮だったのは。

アメリカでは昨年のオバマ圧勝後、敗れた共和党が危機状態にある。党のまとめ役がいない。前大統領ブッシュは不人気だし、オバマと戦ったマケインはもともとMaverick:異端児なので党の中枢ではない。急進的な保守派が党内では人気を集めるが、一般には受け入れられず、次の大統領選に2期目のオバマ対立候補になれる人材がいない。先日辞任したサラ・ペイリンアラスカ州知事が希望の星だったりする。まとめ役もなく、国民から受け入れられるフレッシュな人材もなく、オバマ医療制度改革叩きが唯一党をまとめる道具だったり。ジリ貧状態です。
これからの自民党は、共和党の二の舞にならないようにしないとね。

こちらから日本の選挙戦をネット越しに見ていて異常だなと思うのが、立候補者が選挙にインターネットが使えないという制度。多分先進国では日本だけだと思う。候補者の主張や活動の状況を有権者に知らせる手段を奪っている。若者の政治離れを黙認しているのと同じ。自民党の長老議員さんたちの反対だったそうだが、政権が変わるときっと変わりますよね。古い自民党が措置したネット禁止も、小選挙区制も、結局は自分たちの足を引っ張ることになってしまったよね。

それで思い出したのが、昨年11月の大統領選挙の夜、勝利が決まった直後にオバマ氏から届いたメールのこと。あの日の深夜に私のメールボックスに直接メールが届いた(登録してあったからだけど)。

We just made history.And I don't want you to forget how we did it. (我々は歴史を作った。どうやってそれを成し遂げたか、忘れないでほしい)で始まるThank you レターだった。

これを思い出したので、試しに自民党民主党のサイトにアクセスしてみた(日本時間8月31日の午前4時頃)。

自民党のサイトは、開票結果を報じるページは出来ていたが、トップページは投票日前と変わっていなかった。
「事実。答えを出す前に、事実をしっかり見つめ、よくお考えください。」という(民主党政権になったら大変なことが起こりますよという)脅迫めいたメッセージのまま。

一方、民主党のトップページはさすがに開票結果を受けて変わっていた。
「あなたが歴史をつくった。 政権交代、成る! みなさんの勇気に感謝します。」

ちょっとオバマのメッセージに似てるけど、許そう。公職選挙法を改正して、ネット選挙を解禁し、落選議員の比例区復活という不可思議な制度をなくしてくれると期待しつつ。
夜更けまで選挙速報につきあって、月曜日の朝を迎えたみなさん、お疲れ様でした。

(あ、私は仕事やら税金の関係で日本に住民票をおいたままなので、在外投票の資格がなく、残念ながら今回は棄権しました)