JAZZとPOPと、アメリカの産休制度

8月に入って最初の週末。土曜日は気持ちの良いお天気で、夕方からジャズを聴きに行ってきました。ワシントンDCのポトマック川沿いにケネディ・センターというコンサートホールやシアターが入った建物がある。毎晩、何かしら無料の演し物をやっていて、昨夜はPhiladelphia Jazz Orchestra(PJO)の公演があった。

PJOは21歳以下の高校生と大学生のジャズバンドだが、実力はプロ並みで、毎年夏休みには海外公演ツアーに出るという。昨日も10日間のイタリア公演から戻ったばかりとか。会場に15分前に着いたときには椅子席はすでに満席。サイドに階段があってそこにようやく席を確保できた。私たちのあとに着いた人たちは通路の床に座るか、後方で立ち見になっていた。

ものすごくキレのいいビッグバンドジャズ。ヴォーカルが3人いて、ちょっとかわいい歌(Over the rainbowとかLOVEとか)を歌うアレクシス、難しいCry me a riverなど本格ボーカルのサバンナ、ラテン系アップテンポが得意なベン。ヴォーカルあり・なし取り混ぜてたっぷり1時間。堪能したぞ!って感じ。(しかも無料で)

帰りにぶらぶら繁華街ジョージタウンまで歩いて、Johnny Rocketsというハンバーガーショップに入った。明るい店内、白い壁、赤いレザー張りのベンチシートのテーブル。50年代60年代ポップスが流れ、ジュークボックスがおいてある。American Graffitiに出てきそうな本格アメリカンなバーガーショップ。食事をしていたら急にライトが点滅を始め、白い制服を着た店員たちがずらっと並んで、賑やかなポップミュージックに合わせて踊りのパフォーマンスを見せてくれた。ほぼ満員だった店内は、やんややんやの大喝采

Jazzに、Popに、ハンバーガー、賑やかなアメリカらしい夜でした。

今日の日曜日は、朝から肌寒い雨。家でゴロゴロしていることにした。そこで;

友人のイベットがおめでただそうだ。彼女は政府職員、国務省でいわゆる”ベネルクス3国”を担当している。30代半ば。一度離婚歴があって今のご主人はクロアチア人。高校の時にアメリカに家族で移住してきて、ロースクールをでて弁護士になったナイスガイだ。

来年2月に出産予定とのことで、いつまで働くの? 産休・育休はどのくらいとれるの?と、この際、アメリカの産休制度を知ろうと思ってあれこれ聞いてみた。

驚いたことに、産休・育休という制度はほぼないという。出産前の休みはなし(出産前日まで働くのよ!とか)。出産後はだいたい6ヶ月で職場復帰するのが普通だが、休む6ヶ月間は、日本の産休手当、育休手当にあたるものは一切支給されないのだという。通常の有給休暇を使って1ヶ月分くらいは有給扱いになるが、休業補償は基本的にゼロ。

日本は、産休は産前と産後にあって会社から出なくても保険から手当が出るし、その後も育児休暇の制度を使えば出産後1年間は3割くらいだけど手当をもらって休むことができて、出産一時金や仕事に復帰して数ヶ月後に復帰一時金が出るのだという制度を説明したら、びっくりしていた。「日本はそんなに恵まれているの?」

アメリカは、政府というか社会保険から何の手当もでないのに、子供を産んで育てながら仕事を続けるワーキングマザーは多い。そういえばテレビのキャスターとかタレントさんも、臨月まで大きなお腹で番組に出ているし、確かに半年以内に仕事に復帰してくる。日本では大きなお腹をカメラにさらす局アナやタレントはあまり見かけないから文化が違うのかなと思っていたけど、そんな事情があったんだ。

国務省という仕事柄、海外事情に詳しいイベットはこんな風に言っていた。「アメリカは、ある場面では最先端なのに、これじゃ三流国じゃない、と思う場面が少なくない。でもほとんどのアメリカ人は、アメリカが何でも世界最高と思って疑わないのよね」

でも、日本はこんなに恵まれているのに出生率が世界最低水準。一方アメリカは何の手当も出ないのに先進国の中で出生率の最も高い国のひとつだ。なぜだろう、と私が疑問を呈すると、イベットは「宗教観の違い」を挙げた。確かにBirth Control自体が神様の教えに反するという考えの人たちも多いし、生んで育てられなければ養子に出す、養子を取ることはごくごく普通のことだ。

余談だが、先週、いろいろな場所で働く初対面のアメリカ人と20人くらい立て続けに会って話をするチャンスがあった。そのなかにアメリカ以外の国で生まれ、アメリカ人の家庭の養子として育ったという人が4人もいた。国外から肌の色の違う子供を養子に取る。この辺の文化の違いも、日本ではほとんど考えられないことだ。

私とイベットがそんな話をしていたら、一緒にいた韓国人のスンミが、韓国の出生率の低下は日本よりもっとひどいのよ、と教えてくれた。調べてみたら2008年度の出生率アメリカ2.12、日本1.37、韓国1.19。しかも韓国は1950年頃には出生率6.0を超えていたのが1970年頃から急降下している。スンミも30代半ばで子供がいない。ご主人のご両親が韓国から電話をかけてくるたびに、子供はまだかと責められてノイローゼになりそう、と言っているのだが、その背景にはこんな事情があったんだ。

産休・育休手当の制度、宗教観、国民性、子供を育てる環境・支援制度−−出生率問題のカギは複雑に絡み合った糸のなかにありそうですね。

↓各国出生率推移はこのサイトから拾いました
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1550.html