日本はアジアで最も自由が保障されている

ワシントンの中心部、ペンシルベニア通りに面して、ニュース博物館Newseumがある。その3階に世界の国の’Freedom of Press’(報道の自由)度合いを色分けした世界地図が展示されている。日本に生まれて日本で生活していると「自由の重さ」を感じることはあまりないが、アメリカにいて世界中から集まってきている人たちと話をしていると「自由の重さ」を思い知らされることがある。

このFreedom of Press Mapは、Freedom Houseという非営利団体が世界の国の実情を調べて100点満点で点数化した結果を表示したもの。点数が低いほど自由度が高く、100点に近いほど自由のない国ということになる。

ゼロから30点までが緑(報道の自由がある国)、31点から60点までが黄色(部分的に報道の自由がある国)、61点から100点までが赤(報道の自由のない国)だ。この3色を世界の人口で分けると、緑の国の人口は17%、黄色41%、赤42%だそうだ。つまり世界の人口の83%は何らかの自由を制限された環境で生きている。
※(ここで測定されているのはFreedom of Press報道の自由だが、報道に自由が保障されているということは、表現の自由、思想の自由が保障されていることと、ほとんど同義と思っていいはず)

写真はアジアを中心にヨーロッパ・アフリカを捉えた図。アジアで、緑(報道の自由のある国)はわずか4カ国しかない。日本と台湾、韓国、パプアニューギニアだ。中東に緑色の国はゼロ。アフリカ、南アメリカも緑色はごくわずかだ。ヨーロッパと北米、オセアニアは緑の比率が高い。

地図の脇に設置されているモニタでそれぞれの国の自由度ポイントを調べることができる。先日、あまり込んでいない日に、このモニタの前に30分ぐらい粘って、主要国のポイントを抜き出してみた。

日本の自由度のポイントは21点。台湾23点、パプアニューギニア26点、韓国はギリギリで緑に入る30点。つまり日本はアジアで最も自由が保障されている国、というわけだ。

アジア主要国の数字を拾ってみる。赤(報道の自由のない国)は、北朝鮮が全世界の第一位で98点。ビルマ(「ミャンマー」は自由を迫害している政府が主張する国名なのであえてビルマが使われている)が96点、トルクメニスタンも96点。中国85点、サウジアラビア82点、シンガポール68点、マレーシア65点−−シンガポールもマレーシアも区分は「赤」だ。カンボジア61点。
黄色(部分的に報道の自由がある国)に入るのが、タイ57点、インドネシア54点、インド36点などなど。

では、世界で最も自由なメディアが発達している国は? 1位はアイスランドで9点、2位フィンランドノルウェーで10点、3位デンマークスウェーデンの11点と北欧の国が並ぶ。上位はヨーロッパの国が続き、「自由の国」アメリカは18点と、決してダントツに高いわけではない。

ポイントの決め方は非常に細かく決まっていて、法律的な環境(憲法で自由が保障されているか、報道を制限する法律があるかなど)で30ポイント、政治的な環境(政府や政党の利益のためにメディアが使われていないか、検閲はあるかなど)で40ポイント、経済的な環境(メディアを政府機関が保有したりコントロールしていないか、メディア企業の経営はどのていど透明か、など)で30ポイントで構成される。すべての項目が「最悪」とチェックされると100点になる。
http://www.freedomhouse.org/template.cfm?page=16

私は、この地図の前には幾度となく立っているのだが、そのたびにちょっと誇らしい気分になる。と同時に、その誇らしい気分を、日本にいるときには自覚がなかったことをを残念に思う。
この点数を下げるために、世界でどれだけの人が苦労しているか、涙を、血を流しているか、命を失っているか。それを考えると、日本人は自分たちの自由にあまりに無頓着なんじゃないかと思えてならない。「私たちはアジアで一番自由な国に生きています、アジアの自由のリーダーとして貢献したい」と胸を張って世界に言えるのに、それを無駄にしていない? 

アメリカで政治家の話す言葉のなかには、頻繁にfreedomが出てくる。それを自分たちの誇りとして使っている場合が多い。日本で「自由」という言葉を政治家が前向きに使うのを聞いた記憶がない。
「民主」にわざわざ「自由」をつけて看板にしている先生たちは特に、それを誇りにして、大切にして、世界に伝えてほしいですよね。

日本はアジアで最も自由な国。このことを、ぜひ覚えておいて、誇りに思って、この自由が迫害されないように、日本の点数が悪化しないように、みんなで目を光らせていてほしい。お願いします。