温室効果ガス規制とクレジットカード規制

新政権になって4ヶ月、アメリカでは様々な変化が進行中。今週は特に大きな方針転換がふたつ決まりました。

»»»排ガス規制というか燃費規制

温室効果ガス削減を目的としたカリフォルニア州独自の規制を全米規模で実施する政策が決まった。昨年7月にブッシュが拒否権vetoを行使して実施が見送られた法案が、オバマ政権になって復活したもの。

アメリカには自動車の燃費向上をメーカーに義務づけるエネルギー法があって、企業別平均燃費の基準が、現行はガソリン1ガロン当たり25マイル(1リットル当たり10.6キロ)のところを、2012年から16年までに、35.5マイル/ガロン(15.1キロ/リットル)の達成を義務づける。

「大型SUVにはもう乗れない」という記事が出たりしているが、規制適合車の新車購入には費用がかかっても燃費向上で3年で元が取れる計算だとか。ついでに温室効果ガスの大幅削減が実現するというわけだ。

でも、存亡の危機に瀕しているアメリカの自動車メーカーが2012年までに規制適合車を開発して量産体制に入れるのだろうか。どうやら日本の自動車メーカーには有利な風が吹いているようです。

»»»クレジットカード規制

燃費規制の翌日に打ち出されたのがクレジットカード規制。この法律は、現在は基準が不透明でカード会社が勝手に設定・変更できる金利を規制する「消費者保護」色の強い政策。

クレジット社会のアメリカでは、最低支払額を払っていればカードで買い物が続けられる状態が常習化して気がつかないうちに支払残が膨らみ、一方で、不景気の余波で金利が上昇し、利用限度額が減額され、クレジット破産に追い込まれる消費者が少なくない。

カードの支払期限を1度ミスると、現在はすぐに金利が大幅に上昇して限度額が減額されるが、新しい法律では期限から60日間は金利の変更ができない。ちょっとした手違いで支払期限を過ぎてもその後にちゃんとケアできれば高い金利を払わずに済む、というような内容。

この法案についても、過去のブッシュ政権では法案を議会に提出することさえはばかられる雰囲気だったのが、上院・下院とも圧倒的多数の賛成で可決されたことに隔世の感がある、というようなコメントが寄せられている。

»»»消費者保護局の新設?

カード規制と平行して、消費者保護を専門に扱う省庁の設置が検討されている。カードだけでなく住宅ローンなど、銀行や貸し手の側が勝手にルールを作り「5軒に1軒がローンを支払えずに家を失う現状」「消費者は貸し手の慈悲にすがるしか生き延びるすべがない状態」からの脱却を目指すのだそうだ。

燃費規制も金利規制も、過去ブッシュ政権時代には退けられてきた政策が、次々と可決されて実行に移されようとしている。産業界の弱体化を懸念する声もあるが、クルマにしても金融業界にしても、アメリカは経営側に有利な仕組みばかり追求され、消費者を置き去りにして格差社会を助長してきた反作用が不況のなかで色濃く現れ、オバマ政権はまるでオセロゲームのような方針転換を次々に打ち出している、という景色に見える。
あとは、医療保険改革なんだけど、これは本当に難しいから...