ところ変われば:出入国管理

何事もなく(時差ボケ以外には)体調の変化もなく、ワシントンに戻って、こちらの日常に再びはまっています。
前回、日本への帰国便でマスクが配られて機内検疫を受けた話を書きましたけど、アメリカに入る時には新型インフルエンザに関わる検疫は一切なし。体調を聞かれる質問はゼロですから拍子抜けです。

日本では「豚」を使わず「新型」と呼び習わされるこのたびのインフルエンザは、アメリカではSwine Flu(スワイン・フル)と言う(Swineは豚のこと。鳥インフルエンザはBird Fluです)。
感染者数はアメリカが圧倒的に多いはずですが、日本ほどニュースで騒がれていない。ワシントン周辺は感染者が出ていないせいかもしれない。

日本から出国するときの出国検査では係官は全員マスク姿、乗客にもマスクが目立ちました。私も一応マスクを持っていたのでしてみましたが、周囲に空席が多かったし、うっとうしいので早々に止めてしまった。

太平洋を渡ってアメリカ到着後の入国審査は、不法にアメリカに入国しようとする外国人を取り締まることに重点が置かれれる。マスクなどしていようものなら「怪しい東洋人」と見られて時間がかかるだけだ。

首都ワシントンの国際空港に入国するのは、毎回それなりに緊張します。

バスポートと入国カード・税関申告書を係員に提出すると、私の場合ヴィザがあって住所がアメリカになっているので「何をしているの?」に始まって、いろいろ質問される。主人がこちらで仕事をしているので、と答えると、Husbandは何をしているの? こちらに来てどのくらい? などなど結構突っ込んだ質問が続く(もちろん受け答えは英語。一度だけ片言の日本語を話す係官に会ったことはあるけれど)
係官の見ているPC画面には詳細情報が表示されるようで、その情報と私の答えが食い違っていないか確認しているらしい。

答えに納得すると指紋照合。ヴィザ取得の時にすべての指の指紋はアメリカ政府に掌握されているので、そのデータとの照合ですが、たいてい10本指すべての指紋を照合させられる。今回は初めて右手だけでOKだった。続いてカメラで顔を撮影される。

今回は、割と気さくな感じの若い女性係官で、書類にあれこれ書き込みながら「たくさん書類を書かなくちゃならないの。クレージービジネスよ」と軽口をたたいてくれたけど、そういう係官は少ない。
入国審査官ブースの中に、今回は人が立っていて係官の仕事の様子を見ていた。新人のトレーニングですか?と聴いてみたら「トレーニングじゃなくて、ただ見学しているだけよ」と割とそっけない答えが返ってきたので、あ、突っ込んで聞いちゃいけない質問だったのかなと思って深追いしなかった。

アメリカの入国管理は、不法に入国する人、麻薬など不法物の持ち込みをスクリーニングするのが基本的な仕事だから、何か引っかかると徹底的に時間がかかる。ヴィザなし入国で、アメリカ滞在中の連絡先が不明だったり所持金が少なかったりするだけでも引っかかるらしい。

こちらのテレビで、時々Homeland Security(≒不法入国や密輸の取り締まり)のドキュメンタリー番組をやっている。不法入国や密輸を事前に防止するための政府広報のような役割を持った番組なのだろうと、時々見るが、取り締まりの厳しさは徹底している。

観光目的と言って入国しようとしているのに、帰りのチケットを持っていない、所持金がわずか数百ドル、という東南アジアから来た若い女性が入国を認められず本国に送還される場面を見たことがある。陸路でメキシコから徒歩越境してくる密入国者は陸と空からしつこく追いかけられる。麻薬をクルマの床下とかスペアタイヤの中とかに隠して入国しようとする車両は、徹底的に車体を分解されるというか、壊される。不正が見つかれば、ブツは押収され、入国しようとした人は逮捕されて本国に送還される。

ワシントンの空港で、手錠をされたヒスパニックの男女数人が連行されていくのを、目の前で見たこともある。

無事に税関を通過してヴィザのある限り滞在OKという意味のスタンプをもらうまでは、気が抜けない。時差ぼけの眠気もこの入国審査で一気に覚めるという感じ。

日本の出入国管理は、今はインフルエンザ検疫に重点がおかれ、アメリカは不法入国のスクリーニング。数年前に遊びに行ったニュージーランドで一番丁寧に調べられたのは、トレッキングシューズの靴底だった。他の大陸からの種や細菌を含んだ土が靴底についていないことを確認するのが、出入国管理の最大の注意点というわけ。
ところ変われば、入国管理のポイントもさまざまだ。