BABY BOOM?

先日発表された統計で2007年のアメリカは、1957年以来のベビーブームだったことが分かった。2007年の出産件数は430万件を超え、史上最多だったそうだ。

少子化対策が進まない日本と違って、アメリカに少子化問題高齢化社会への懸念は、いまのところない。ただ、別の問題が浮き彫りになっている。2007年に子供を生んだ女性の4割が「未婚」。特に出産率が上がっているのが15歳から19歳のティーンエイジャーというのだ。

人種別ではヒスパニックの出産率が最も高いが、白人、黒人、アジア系すべての人種で出産率は上がっている。シングルマザー率の高さでは、黒人とヒスパニックが特に高く、黒人では72%、ヒスパニックで51%が未婚の母だとか。白人のシングルマザー率は28%。比較すれば少ないが、3人に1人弱は未婚だと思うと、日本人の常識では異常に高い気がする。

例えば、昨年の大統領選で共和党マケイン陣営の副大統領候補で話題になったアラスカ州知事サラ・ペイリンには17歳のブリストルという名前の娘がいて、副大統領候補に決まった後にブリストルが妊娠していることが分かってマスコミが大騒ぎをした。その後ブリストルは出産し、子供の父親であるボーイフレンド(確かアイスホッケー選手)と婚約していたが、先日、破局したそうだ。つまりアラスカ州知事の長女はシングルマザーになってしまったワケ。

こちらでオーディション番組などを見ていると、まだ10代や二十歳そこそこの若い女性たちが幼い子供を抱えながら、歌や踊りのレッスンをしてオーディションに出てくることが本当に多い。現在TOP10人にまで絞られた2009年のアメリカン・アイドルには、女性が4人残っているが、16歳の一番若い子以外は全員が20代で母親だ。

10代の女性たちに「望まない妊娠」をさせない取り組みが連邦・州・地域の政府やさまざまな組織で進められてきていると新聞記事は伝えている。それでも2006年、2007年と続けて10代の出産率が上昇しているとのこと。妊娠中絶どころか避妊そのものを認めない宗教的背景とか、あるいは娘が出産しても家族や地域社会が育児をサポートする仕組みがあるとか、出産しやすい環境がこの国にあるのは確か。

少子化対策大臣」までおいて笛吹けど、制度の狭間で産科医が減り続け、妊婦を受け入れてくれる病院がなく、救急車を呼んでも病院につけるまで数時間もかかったり、あるいは出産後に子供を預けられる保育園がなかったり、不況で育児休業後の復帰が出来なかったりと、子供を産んで育てる環境があまりに貧弱な日本と、アメリカの出産・子育て問題はずいぶん次元の違うところにあって比較もできないけれど、BABY BOOMは、そんなに悪くないんじゃない?