Healthy San Francisco:ある医療改革

こちらワシントンは今週日曜日から月曜日にかけて吹雪。その後水曜日まで日中でも氷点下の真冬日が続いて3月としては10年ぶりの寒さでした。それが昨日から気温があがり今日は20℃くらい。暖房を止めて窓を開けています。金曜日の夕方、公園を散歩する人たちの中には半袖・短パンも結構いる。春が来たかな?

次の日曜日から時間が1時間戻って夏時間になります。日本との時差は13時間になるわけですね。

さて先日、アメリカの医療保険の破綻ぶりをレポートしましたが、その後いろいろ調べていたら、地域単位の取り組みで市民皆保険に近い状況を実現している町がありました。

カリフォルニア州サンフランシスコ。
♪I left my heart in San Francisco〜のスタンダードナンバーのとおり、アメリカでは「最も住みたい町」調査で常にナンバーワンになる町です。私はサンフランシスコの隣町バークレイで学生をしていた頃に毎週末のようび遊びに行っていたので、とても親しみのある町。当時、公営バスが長い長いストライキに入っていたために、使える公共の交通機関がBARTと呼ばれる地下鉄とケーブルカーしかなくて、あとはひたすら歩いてあちこちに行っていました。そらで地図が書けるほどよく知っていますが、アメリカのどこに住んでもいいと言われたら、やっぱりサンフランシスコは有力候補ですね。

話がそれましたけど、サンフランシスコには現在、Gavin Newsomという民主党所属の市長がいます。現在42歳。サンフランシスコの最年少市長だそうです。そのNewsom市長が2007年に立ち上げた「ヘルシー・サンフランシスコ」というプログラムは、保険未加入の市民(サンフランシスコ市とサンフランシスコ郡の住民)に低額の医療を提供して成功を収めています。「医療保険」費用を提供するのではなく市内2300人の医師、6つの総合病院、200以上の薬局が参加するネットワークによって必要な「医療」を提供する。実際的ですよね。

市の予算は年間2億ドル(200億円)、このプログラムに参加するには単身の場合は年収520万円以下、世帯収入1040万円以下であること。市民の負担は収入に応じてゼロから月に最高200ドル程度。医者にかかったときの負担金は原則ゼロ。
プログラムを立ち上げる前の2006年に、サンフランシスコには無保険人口が8万2000人いたそうですが、このプログラムに5万人以上が参加。子供たちの99.2%が医療保険のケアを受けられるようになったそうです。

医療保険」でなく「医療」を提供するという発想の切り替えが素晴らしいですね。国家全体の保険システムを変えるのは時間もかかるし大変なことだと思いますが、推進力のあるリーダーがいれば、地域ごとにこうした状況は作れる。地方の知事・市長が活躍して地域から国を変えていく構造は面白いと思います。

このNewsom市長は他にも、アメリカが参加を拒んだ京都議定書にサンフランシスコ市として単独で参加したり、連邦の最高裁違憲判決を下したあとも同姓婚を認め続けたりと、独自の道を推し進める実行力がある。医療改革については2月にワシントンに呼ばれてオバマ大統領からこの取り組みを賞賛されていました。

サンフランシスコのあるカリフォルニア州には、現在2期目のシュワルテェネッガー知事という人気者の知事さんがいますが、このところの不況と頻発する山火事で州の財政が破綻している。そのうえシュワ知事は3選を禁じた法律によって来年2010年の知事選には出られない。そこで州知事の有力候補に上がっているのがこのNewsom市長だそうです。市長から知事へ、知事から大統領候補へ?

さてさて若くてハンサムなNewsom市長は、注目です。