モールの芝生とオバマ政権の緊急経済対策の概要

大統領就任式の大騒ぎもようやく落ち着き、新政権による矢継ぎ早の政策発表が連日ニュースを賑わしている。

就任式当日は、1人の逮捕者もなく平和に終わったのだが、就任式を間近で見られるチケットを持っていた24万人のうち、セキュリティチェックポイントへの入り方を間違えて結局就任式が見られなかったという人たちが1万人近くでた。

まだ暗いうちから集まってきた人たちの中に、係員に場所を確認せずに「多分ここだろう」で、当日は閉鎖されるはずだった地下通路に入り込んだ人たちがいた。前の人が入っていくと、それが正しいと思ってあとに続くのが人間の習性。どんどん列が延びて、数千人に膨れあがり、もともと閉鎖されて係員が配置される予定のなかった場所なので、行列に出口はなく、後から後から集まる群衆に押されて地下通路に並んだ人たちは結局、就任式に間に合わなかったそうだ。

あとから説明を聞けば、なるほど群衆の行動とは、ひとつ間違えると簡単には修正の利かないものだと理解できるけれど、そこに巻き込まれて地下通路で長時間待たされた人にとってはやるせない出来事だったろう(この人たちには何か埋め合わせが考慮されるらしい)。

ところで、昨日ワシントン中心部に行く機会があって200万大群衆が就任式を見たナショナル・モールで大問題を発見。モールは「広大な芝生の広場」と紹介してきたが、あの日以来「芝生」がなくなっていたのだ。

ここの芝生はナショナル・パーク・サービスという国立公園などを管理する行政の機関が管理し、夏には子供たちが走り回り、移動式のゴールをおいてサッカーをする若者たちがいたりと、人々に親しまれている。冬になってからは「芝生の保護のため入らないでください」という看板とともに周囲をロープで仕切って立ち入りを制限して芝を保護していた。その芝生を就任式に集まった200万群衆が数日にわたって踏みつけた。昨日見たモールの広場に芝生はなく、すり切れた芝の根とむき出しの土になり果てていた。群衆パワーのすごさ。モールの芝生が暖かくまでに再生できるといいのだけれど。

さて、オバマ政権が打ち出した経済再生計画の概略について少し。今朝(1月25日)のワシントンポスト紙がまとめたオバマ政権が提案した緊急経済対策の内容です。(参考のために基本情報:アメリカの人口3億人、世帯数は1億1000万。社会保険未加入者は4500万人います)

・エネルギー政策:
 再生可能エネルギー施設を拡充し3年間で600万世帯分の電力を供給する
 約5000キロ分の最新の送電設備を整備し4000万戸に最新のメーターを設置する
 最低200万戸の住居と連邦政府の建物の75%をエネルギー効率のいい耐候性とする

・Health Care
 失業者および健康保険を失いそうな850万人に健康保険を保証する
 医療保険の資格を失いそうな2000万人以上の保険を保証する
 過去5年分のアメリカ国民の健康管理の記録をコンピュータ化する

・教育
 全米1万校の公立学校をリノベートする
 大学進学を奨励するために「American Opportunity減税」2500ドルを創設する
 現状より35万多くの子供に保育園サービスを提供するEarly Head Start(早期教育)プログラムを拡充
 700万人の大学生へ奨学金を提供しているPell Grants基金への資金提供

・インフラ整備
 90の主要港湾のセキュリティーを強化する
 上下水道の改善プロジェクトを大規模にスタートする
 道路整備を大規模に行う

・税制
 95%の労働者とその世帯に1000ドルまでの減税を行う
 児童減税を強化し現在の600万世帯の他に1000万世帯を減税対象にする
 Food Stamp(低所得者層への栄養補助)を拡充し対象を3000万人に

キャンペーン期間中から強調していたとおり、クリーンエネルギー、国民皆保険、教育機会の拡充と労働者世帯の大幅減税に力点がおかれています。当面は政府の資金を使う一方の政策で、ミニマムコスト8200億ドル、雇用創出400万件、対策期間18ヶ月。効果が現れるのは2010年後半だろうと言われていますが、透明性を重視するオバマ大統領らしくwww.recovery.govというサイトを立ち上げて、緊急対策資金がどのように使われているか常に国民が知れるようにするとのこと。

アメリカの景気が回復しないことには、世界の不景気は終わらない。世界中が期待している新大統領の手腕。早く対策が実を結ぶといいですよね、本当に。