We Are One:記念コンサート

Mac5102009-01-19

大統領就任式に先立つ1月18日(日)。We Are Oneと名付けられたキックオフイベントが行われました。数多くのセレブリティが登場するチャリティコンサート程度に思っていたら、もっと本格的な歴史的なイベントでした。 スピーチと音楽が交互に登場するスタイルで、それぞれのスピーチにはテーマがあり、テーマに合わせた映像も流れる凝った演出。登場する誰もが力いっぱいのパフォーマンスで、テレビ中継はノンコマーシャルで2時間。テレビの前を離れられない2時間でした。ざっと紙上中継をしてみます。

場所はリンカーン記念堂の前の特設舞台。リンカーン像が見下ろす位置でパフォーマンスが行われるので締まった感じ。

軍バンドによるファンファーレでスタート。Ladies and gentlemen, please welcome 〜のアナウンスとともに、まずバイデン副大統領夫妻が、続いてオバマ大統領夫妻が登場。舞台の袖に防弾ガラス張りで設けられたファミリー席に収まる。軍のバンドの伴奏で軍の代表が国歌斉唱(歌の出だしが合わずにちょっともたついた)。

俳優ディンゼル・ワシントンDenzel Washingtonが舞台に登場して、このイベントは「We are One」と名付けられたとスピーチ。

The Bossとニックネームされるブルース・スプリングスティーンBruce Springsteenがギターを持って登場。ゴスペルコーラスをバックに♪The Risingを演奏。この曲はオバマのキャンペーンソングにも使われた。スプリングスティーンオバマのキャンペーンの要所要所に登場してきた強力な応援団でした。 ↓すでにこのコンサート映像がネットで見つかったのでリンクします
http://www.mtv.com/news/articles/1602991/20090118/springsteen_bruce.jhtml

次は女優のローラ・リネイLaura Linneyフランクリン・ルーズベルト大統領の就任演説を紹介。またマーチン・ルーサー・キング3世(キング牧師の息子)が、ケネディ大統領の有名な就任演説を紹介したあと、黒人女性歌手のメアリ・ブリージMary J. Bligeが♪Lean on meを熱唱。そして黒人のオスカー俳優/コメディアンのJamie Foxxと白人コメディアンSteve Carellが登場。Carellはジェファーソンの言葉を引用し、Foxxは大統領選勝利演説のオバマの言葉を引用して大受けした。

次は、黒人女性ソウルシンガーのBettye LavetteとJon Bon Joviボンジョビはラヴェットの迫力に押され気味だったけど♪A Change is Gonna Comeというこの日にぴったりの曲をデュエットした。

続いて俳優Tom Hanksが登場。リンカーンのことをじっくり話した。リンカーンは物静かな男だったが、口を開くとデモクラシーを語った。「私は奴隷になるつもりはないし、まして奴隷を使う主人になるつもりはない」というリンカーンの言葉こそ、私(トム・ハンクス)が考えるデモクラシーというものだ。"Lincoln was a quiet man," Hanks says, "but when he spoke of democracy this is what he said -- 'As I would not be a slave, so I would not be a master. This expresses my idea of democracy.' "ーー寒い日で多分一番長い話をしたトム・ハンクスは最後はちょっと鼻水が出てきそうになっていた。

次は豪華なセッション。シンガーソングライターJames Taylorがギターを抱えて登場し、自身のヒット曲♪Shower the peopleを若手R&DシンガーJohn Legendとカントリー女性シンガーJeniffer Nettlesと共演した。 (※John Legendはケミストリーや平井堅と共演して日本でもけっこうなじまれているシンガーです)
http://jp.youtube.com/watch?v=DjKnHAKtYFA  ←♪Shower the peopleはこんな曲です

女優のMarisa Tomeiがレーガンの就任演説を引用した後に、ジョー・バイデン副大統領がステージに登場してスピーチ。

続いてジョン・メレンキャンプJohn Mellencamp(70年代を知っていたらジョン・クーガーと名乗っていた人です)がギターを持って出てきて、♪Pink Housesで観衆が盛り上がる。

女優/シンガーのQueen Latifahは、人種差別の歴史を語った。1939年に黒人女性歌手のメアリ・アンダーソンが黒人であることを理由に出演をコンサートホールへの出演を拒否された。憤慨した当時のエレノア・ルーズベルト大統領夫人のはからいでリンカーン記念堂で歌うことになった。この時代に7万5000人の聴衆を集めたというから、ものすごく大きな出来事だったのだと思う。その時にメアリ・アンダーソンが最初に歌う曲に選んだのがこの曲だと、次に歌う二人に橋渡しをする。

歌ったのはJosh Groban と Heather Headley 曲は♪My Country, 'tis of Thee(America) 
http://jp.youtube.com/watch?v=tpbRANjI6kc
※この曲はイギリス国家のGod Save the Queenと同じ曲。アメリカでは独自の歌詞がついて「アメリカ賛歌」のように歌われています。

アメリカ人の心にぐっときたところで登場するのが、人気コメディアンのGeorge Lopez と俳優のKal Penn。多様な人種、多様な価値観が共存するアメリカについて話し、続いてジャズピアノのHerbie HancockにヒップホップのWill.I.am、シンガーソングライターCheryl Crowとまさに多様なジャンルの共演で、ボブ・マーレーの名曲One Loveで盛り上がる。
http://www.jango.com/music/Bob+Marley?l=0

ここで、タイガー・ウッズが登場。ウッズは軍人の家庭に育ったそうで、父親の話とアメリカの軍人への感謝をスピーチし、US Nave Academyバンドとソプラノ歌手Renee Flemingを紹介する。演奏されたのは♪You'll Never Walk Alone.

続いて、俳優Jack Blackとプエルトリコ出身の女優Rosario Dawsonが、リンカーン大統領が自然保護法を定めて以来自然を大切にするのはアメリカの美徳と語り、アメリカ各地をドライブ旅行しながらラジオで聴くのはこんな曲、とカントリーの大御所Garth Brooksへつなぐ。
エスタンハットにカントリーギターで登場したガース・ブルックスの♪American Pieで50万人の大観衆が盛り上がる。
http://jp.youtube.com/watch?v=3GB0f47BMak  ←ぜひこのYou Tubeで ノリノリになれます。

続いて登場した女優のAshley Juddと黒人俳優のForrest Whittakerは、アートや文学を語り、フォークナーの言葉を引用する。そのあとを受けて登場したのがR&Bシンガー Usherと女性ラテン系シンガー Shakira。その背後でキーボードを弾くのがStevie Wonderとこれも豪華なセッション。スティービーのヒット曲♪Higher Groundリンカーン記念堂前に集まった50万の観衆がスイングしていた。
http://jp.youtube.com/watch?v=ZjcgAXC-Gjs  ←このコンサートの映像がすでにアップされていたので雰囲気を感じてください。

すっかり盛り上がったところで登場したのが、黒人俳優のSamuel L. Jackson。マーチン・ルーサー・キングJr牧師の黒人解放運動と彼がこのリンカーンメモリアルで40万人を集めて行ったI Have a Dreamスピーチに触れ、次の火曜日(大統領就任式)にはキング牧師の「夢」がついに「過去のもの」になる、と力強く語った。

この後に満を持して、という感じで登用するのがU2。ボーカルのボノは語りを入れながら「ダブリン出身の4人の悪ガキがここで歌えるのは光栄なこと」と言い、キング牧師に捧げた彼らの曲、♪Pride (In the Name of Love)を歌い"let freedom ring!" を繰り返した。
http://www.jango.com/music/U2?l=0
さらに、オバマのキャンペーンソングとしても使われた♪City Of Blinding Lights も熱唱。ここでは"oh, you look so beautiful tonight" で歓声が上がる。
http://www.metacafe.com/watch/1722341/barack_obama_city_of_blinding_lights_u2/

ここで一息、なぜかアメリカの国鳥であるAmerican Eagleのパフォーマンスがあって、いよいよ、オバマ次期大統領がステージに上がる。
短いながらも締まったオバマのスピーチの後は、再びBruce Springsteenが、フォークの大御所Pete Seegerのサポートとして登場する。♪This Land is Your Landを大観衆と一緒に大合唱。大観衆をカメラがパンしながらなめていったときに、手を叩きながら一緒に歌っているジョージ・ルーカスの姿を見つけた。調べてみたらピート・シーガーは1919年生まれ。90歳のフォークシンガーが初の黒人大統領の誕生を祝ったというわけ。長生きはするものだ。
http://jp.youtube.com/watch?v=cl3owqxkqDs&feature=related ←ここではPPMピーター・ポール&マリーの歌で

最後に登場したのが当代随一の歌姫Beyonceアメリカ国旗と50州の州旗を持った軍人を背後に従えて ♪America the Beautifulを熱唱。さすがの歌唱力。最後は出演者全員がステージに集結して会場全体が一体になって大合唱でした。
http://jp.youtube.com/watch?v=UMYCj3IJ_VQ&feature=related ←これはバーブラ・ストライザンドの歌で聴けます。

新聞によると観衆の数は40万とも50万とも。若者が多いのかと思いきや、年配のカップル、おじいちゃんから小さな子供まで家族で繰り出してきたらしい家族。もちろん若者グループも。気温2℃のなかを2時間(待ち時間を加えると多分5時間とか)、みんな本当に楽しそうにコンサートを楽しんでいました。
それにしても、子供からお年寄りまで全員で盛り上がって、こういう機会に歌える歌がこんなに沢山あることが、何ともうらやましい、と思いました。