INAUGURAL BALL

今日のExaminer紙によると、1月20日の大統領就任式にからんで今週末から20日にかけてワシントンとその周辺で開かれるイベントの数は170を超えるらしい。その多くが「Inaugural Ball」と呼ばれるパーティ。基本的には「Ball=舞踏会」だ。

もともとニューヨークに比べて華やかさに欠け社交の少ないワシントン。大統領就任式の夜くらい華やかに舞踏会をやろうと第4代マディソン大統領のときに始まった慣習だとか。近年はワシントンのあちこちで就任式組織委員会主催のもの、各州が主催するもの、さまざまな公的組織が主催するものなど数多くのBallが開かれ、公式なもの、Politically correctなものには新大統領夫妻が登場して1曲踊っていくのだそうだ。今年は特にそのBallの数が半端でないという。

Ballのなかには主催者が選んだ招待客しか出席できないものも多いが、一般に公開されているものもあってチケットを買えば誰でも参加できる。ちなみに今回の公式Ballのひとつでチケットを調べてみたら、1人250ドルくらいだった。

Ballなので男性はタキシード、女性はドレスが基本。ソフトドリンクとピーナッツかクラッカーくらいは出るが基本的に飲食は期待しないこと。(特に今年は)交通規制が厳しいのでBallへの行き帰りの交通手段をきちんと考えておくこと(望ましいのはリムジンを雇ってBallの間待たせておくことだそうだ)。厳寒の夜に行われるイベントなのでコートが欠かせないが、セキュリティと人混みでコートを預けたり請け出すのに延々と時間がかかるのを覚悟すること。女性の場合は大金かけて着飾る必要はない。この夜に注目される女性はファーストレディだけだから。座るところはないと覚悟した方がいいのでハイヒールでなく長時間立っていて疲れない靴を履くことーーなどなど、各新聞に注意書きの記事が掲載されている。

古い時代の「舞踏会」と違って、いまは登場する有名ミュージシャンの演奏が目玉。踊りたい人は踊ってもいい程度のことらしい。日曜日にキックオフコンサートに登場するビヨンセからスティービー・ワンダーまで数多くのミュージシャンたちは、その後あちこちのBallに引っ張りだこのようだ。

テーマが設けられているBallも多く、アル・ゴア主催のBallはもちろんGreen Ballでエコがテーマ(このチケットはあっという間に売り切れたそうだ)。HipHop Ball、Jazz Ball, Bluegrass Ball, Gospel Ball, Aloha Ball(オバマはハワイ出身なので)など音楽ジャンル別のBallもあれば、MTV主催、Google主催など企業やメディアが主催するもの、Young Executive Ball, Creative Ball(これにはスティングやエルビス・コステロが出演予定)と年齢と専門分野で参加者を区切っているものなど、数え上げるとキリがない。カリフォルニア州のBallにはファッションショーがついている。

こうした企業や組織が主催するBallの他にも、一般の人たちが自分たちで勝手にBallを企画して友人を集めて盛り上がるというのもある。最近はオバマのサイトに行くと「自分のBallを企画しよう」というコーナーがあって、自分が主催者になって時間や場所をサイトに登録すると同じオバマ支持者ネットワークで近隣に住む人たちにお知らせが行って自前のBallを主催できるようになっている。(こうした“勝手にBall”は、もちろん冒頭の170の数には入っていない)

今日はテレビでワシントン郊外の幼稚園が園児たちのInaugural Ballを開いたというニュースをやっていた。男の子は蝶ネクタイにブレザー、女の子はロングドレスで決めて(七五三のようでしたけど)、ジュースで乾杯をして先生の弾くピアノに合わせてダンスをしていた。誰もがInaugural Ballを楽しみたいということらしい。

100を超えるInaugural Ballを調べていて、これは注目だと思ったのがThe Huffington Post主催のもの。The Huffington Postとは、ここ数年注目されているインターネット新聞。リベラル系のブロガーやコラムニストが積極的に寄稿して、オバマ勝利にも大きく貢献したとされるメディアだ。
http://www.huffingtonpost.com/

このHuffPo(と略称される)のBallは、1月19日の夜にワシントンの一等地にあるニュース博物館NEWSEUMを借り切って前夜祭として行われ、深夜にカウントダウンをするのだそうだ。ボン・ジョビ、スティング、ハル・べリー、トム・ハンクス、スティーブン・スティルバーグなどなどビッグネームが数多く登場する。ネットメディア主催なので、新しいメディアのあり方を探るのがテーマ。参加者が現場からブログをアップし、読者はBallの様子をネットで見られるらしい。

大統領夫妻が登場するいくつかのBallはテレビ中継されるらしいので、テレビとネットを見比べながら、Inauguration の喧噪を見届けようと思っています。