Life after the White House

昨日、ブッシュ大統領の最後の記者会見が行われた。ホワイトハウスの8年間を振り返って、時には感傷的にもなり率直に語った会見だった。任期中のいくつかの発言は間違いだったと認めつつも、自己防衛にまわる場面が多かった。

特に評判が悪かったのが、ハリケーン・カタリーナでニューオリンズなど広い地域が水没して取り残された多くの住民が被害にあった事件。対応が遅いと批判されたことに対して、あれ以上何が出来たと思う?という開き直りとも取れる発言。 歯に衣を着せぬ発言で人気のCNNの女性キャスター、キャンベル・ブラウンは、 「イランもアフガニスタンも経済政策も、まだ進行中のことはブッシュの政策に評価が下るのはまだ先のことで議論の余地はある。でもカタリーナの対応の遅れは「既定の事実」議論の余地はない。食糧も水もないなかで3万人が置き去りにされた状況を私は現地に入ってこの目で見てレポートしたのよ、それを全米が見ていたのよ、とんでもないわ!」とすごい剣幕で切り捨てた。
最後まで、尊敬を勝ち得ることなく、ジョージ・W・ブッシュホワイトハウスを去ろうとしているみたいだ。

ところで、ホワイトハウスを去ったあとの大統領たちがどんな余生を過ごしたか、という雑誌の記事とそれにまつわる話を聞いた。 アメリカ大統領という世界で最も大きなパワーを持つ立場にいた人たち。退任後半年は大統領時代と同様に国費で警備がつき、様々なパーティーが開かれて余韻に浸る時間があるらしい。そしてパーティーが終わって警備スタッフが去っていった半年後...。仕事を失い、活躍の場を失い、目標を失い、酒に溺れたり病気になってしまう例も過去にはあったらしい。

建国後間もない時代の大統領たちは、初代ワシントンや2代目アダムス大統領は、自宅に戻って農場経営をしたそうだ。ワシントンはワインやウイスキー醸造場も残している。 3代目ジェファーソンはヴァージニア大学を創設した。退任後に18年間も下院議員として政界に居続けた大統領(6代目アダムス)や、最高裁長官になった大統領(タフト)は、国のために奉仕を続けた成功例だ。

ウォーターゲート事件で辞任を余儀なくされたニクソンは、その後何冊も本を書き、世界各国の首脳たちと親交を深めて外交政策についてその後の大統領たちのアドバイザーとなり、亡くなるまでに失った名誉を大きく回復したとされている。

任期を終えて退任したときは人気のなかったジミー・カーターは、その後、人権保護のために貢献し、新興国の選挙監視役や中東紛争の仲介役となり、大統領時よりその後のほうがはるかに人望の厚いキーマンになっている。ビル・クリントンは、「ビル・クリントン財団」を創設してAIDSや飢餓、地球温暖化といった地球規模の問題に取り組んでいる。

「大統領の経歴」を生かして本を書いたり講演をしたりして多額の収入が得られるのは現代の大統領ならではのことらしい。トルーマン大統領は、退任後の生活資金を銀行からの借金でまかなったそうだ。政治がらみの「コンサルタント仕事」を依頼されても、それがどんなに高額の報酬であっても「大統領職の権威と尊厳を汚すような商業主義には乗れない」と断固として断ったという。(トルーマンは原爆投下を決断した大統領なので日本人には好感を持たれていないが、なかなか立派な人だったんだと見直した次第)

「大統領の経歴」で大金を稼いだ最初の大統領はフォード。退任後にエージェントと契約して本の執筆、講演、企業の相談役への就任(20もの企業と契約していた)などで1980年代に年間170万ドル(1.7億円)の収入があったとか。レーガンも年間200万ドル(2億円)を稼ぎ、ジョージ・H・W・ブッシュパパ・ブッシュ)は講演料で年間400万ドルを稼いでいる。ビル・クリントンは(大統領時代の「不適切な」事件や何やらの訴訟費用などで)退任時に1200万ドルの借金を抱えていたのだが、その後に講演料やらコンサルタント料やら本の執筆契約料やらで、ビルとヒラリーは、1億ドル(100億円)以上を稼いだらしい。

去りゆくブッシュはテキサスの広大な農場を拠点に(もともと裕福だ)、財団を設立して「第二の人生」を送ることになるらしい。不人気で退任するブッシュが、トルーマンニクソンやカーターのように、その後の生き方で尊敬を勝ち得るようになれるのか、昨日の記者会見を見た限りでは???