2008年のヒット商品:アメリカ版

年末になると、今年のヒット商品とか、今年の流行語とか、1年を総括する企画がニュースを賑わしますが、こちらアメリカでも最近、アメリカ広告界で最も権威のある雑誌Advertising Ageが2008年のマーケティングに優れたヒット商品50を発表しました。(詳細はこちら)
http://adage.com/article?article_id=132402

50ブランドもあるのでほとんどの産業分野から注目の商品が選ばれています。例えばクルマではGMのキャデラックCTSとシボレーマリブの2車種が入っていますけど、最近のBIG3のニュースと重ね合わせてみるとムリムリな感じがします。

日本からは4つのブランドが選ばれていました。SONYのブルーレイ、任天堂Wii Fitは、しごく当然という気がしますけど、意外なブランドが二つありました。

まず、ユニクロユニクロアメリカではニューヨークのソーホーに1軒しか店舗がなく決してメジャーな存在ではないのですが、カンヌ広告祭で展開した「ユニクロック」キャンペーンが注目されたのと「世界で一番ブランドが好きな国からやってきてブランド名を表示しないブランド」がcoolに見えるようです。

もうひとつのランクインが「爆丸バトルブローラーズ」。このデータを調べるまでぜんぜん知らなかったのですがテレビ東京のアニメから始まった106人のキャラクターが戦うゲームらしい。それぞれのキャラクターにストーリーがあって、カードを集めたりグッズを集めたり、なかなか手の込んだ仕掛けになっていて、アメリカではトイザらスが日曜日に「爆丸トーナメント」を開催して盛り上がるのだという。

食品やドリンクの分野では肥満対策、健康志向、自然志向が進んでいるのを反映して、低カロリー、オーガニックなどがキーワードだった。大豆タンパクを使った食品Tofurky(トーフキーと発音するのかな)、食物繊維が豊富なFiber OneやSpecial Kが売れ、アンディ・ウォホールの絵で有名なキャンベルスープまで「低塩スープ」で売上げを伸ばしたらしい。

ドリンクでは、日本では下火ですが、いわゆる機能性飲料(Enhanced Water)や低カロリードリンクが4種類も入っていた。コーラを飲まずにこうした「ニア・ウォーター」を飲むのがカッコいいのです。

今年のキーワードは「チェンジ」でしたが、チェンジではなくて原点に戻ったマーケティングで売上げを伸ばしたものもいくつかある。古いブランドに多く、ビールのクアーズ、バーボンのジム・ビーンバーガーキングヒルトン・ホテルなど。

ざっと50ブランドを見渡してみて、私が半年間アメリカで暮らした皮膚感覚でこれはヒットしているなあと感じられるものは、そうはない。まあ、appleiPhoneとキッチンタオルのBountyくらいかな。(BountyはCMを見て、1枚が何度も使える耐久性に惹かれて買いました。それ以来ずっと使っていますけど“使えます!”)

私の個人的な感想は、2008年アメリカの最大のヒット商品はBarakObama.com。オバマ次期大統領を勝利に導いたウエブサイトは、選挙戦の最中に300万人が登録し、5ドル10ドルと少額の募金を集め、選挙活動のボランティアを草の根で組織してアメリカを動かした。

私も試しにサイト登録しましたが、今でも週に数回メールが届きます。次期政権の主な人事はこんな人たちですという紹介メールだったり(ニュースで知るのとダイレクトに知らされるのでは親近感が全然違う)、今後の活動についてのアンケートが届いたり、国民を組織して運営を続けているマネージメントの力は、ものすごい。

AdAgeの今年の50に選ばれなかったのは「非営利団体」だからなのかも知れませんが、マーケティングのパワーとして記録に残すべきものだと思っています。