オバマ候補の30分コマーシャル

※久々に大統領選挙の話題です。
大統領選挙まであと6日となった10月29日、夜8時から30分間、4大ネットのうちABCを除くCBSNBC・FOXとMSNBCを加えた4局でバラク・オバマ候補の特別番組の放送がありました。30分間のコマーシャルというかインフォマーシャルと言われる番組ですね。1局につき100万ドル(約1億円)の放映料と言われています。

先ほど放送された番組の内容は、こんなものでした。

4人の子供と病気を抱えて働いている夫を持つ主婦が住宅ローンや医療費のやりくりに苦しんでいる現実、夫がリタイヤしてから医療保険がなくなって毎日12種類の薬を飲みながら暮らしの先行きが見えないと訴える老夫婦などなど、この国の制度の狭間で不安な生活を送る人々をドキュメンタリー風に紹介し、合間にオバマが経済政策や医療保険プランなどを詳しく説明する。さらにオバマ支持の議員や州知事が彼の人柄や功績をコメントする。さらに本人が子供の頃の両親の思い出を語り、母親は51歳でガンで亡くなる直前まで病気のことより医療費をどうやって捻出するかを心配していたことなど政治を志すきっかけになった思い出を語る。夫人のミシェルも登場して、彼はどんなに忙しくても子供たちと毎日必ず話をする時間を作っていると良き家庭人であることも証言する。 最後に「完璧な人間はいないように、自分も完璧ではなく完璧な大統領にはなれないだろう。しかし、どんなときも自分が何を考えているか説明すること、常に正直であること、意見が対立する相手の言葉をきちんと聞くこと、そして民主主義の次なる扉を開くために進んでいくことを約束する」というメッセージで締めくくった。

ドキュメンタリー部分のナレーションもオバマ本人が担当していて30分間にCM中断なし(これ自体がコマーシャルだから当然だけど)。まさにオバマによるオバマのための30分でした。番組自体はダレるところが一切ない秀逸な出来、最高のスタッフが制作を担当したのだろうなと思わせる。

選挙まで1週間を切って、テレビをつけていると選挙CMが全CMの3分の1くらいのボリュームを占めているように感じる。大統領選挙だけでなく上院・下院の選挙もあるので、議員さんたちのCMもたくさん流れている。まあ、選挙CMの半数以上が対戦相手を攻撃するネガティブ・キャンペーンで、正直、うんざりという感じ。最近のオバマCMは「マケインは(ネガティブ・キャンペーンで)みなさんを怖がらせていますが、私は自分の思いを語ります」とビジョンを語るCMを多用している。今日の30分番組もマケイン批判は一切なし。マケインの「マ」の字も出てこなかったと思う。マケインと違って相手を叩かずとも自分を語ることで勝てる横綱相撲の域に入ったという感じですかね。30分番組はまさにだめ押しの感じ。

ところで1局につき100万ドルの放映料を支払えるオバマの選挙資金ですが、ここでもマケイン陣営には太刀打ちできない環境にあります。 アメリカの大統領選挙は(細かい規定はあるのだと思いますが)党選出の候補者には約8500万ドルの交付金が税金から支給される仕組みがあります。この交付金を受けると一部の例外的な資金を除いて、選挙戦はこの交付金のなかで戦わなければならない規定に縛られます。過去、この交付金を受け取らずに選挙を戦った大統領候補はほぼ例がないそうですが、オバマはこの交付金を受け取っていないのです。つまり8500万ドルの枠に縛られずに、正当に集めたものなら自分で集めた選挙資金を好きなだけ使える立場にいるわけ。

アメリカは企業献金が禁止されているので、これまでは個人献金で8500万ドルの交付金を大きく上回る資金を集めるのは難しいと考えられていたわけですが、若者が支持層の中核を形成するオバマはインターネットを駆使した献金システムを活用して、これまでに6億ドル(600億円)を集めたと言われています。まさに湯水のごとく選挙資金を使える立場にいるワケですね。

試しに、オバマの公式サイトに行って献金画面を見てみました。 http://my.barackobama.com 名前・住所・emailアドレスを入力すると献金しなくてもObama/Bidenステッカーを送ってもらえます。15ドル以上の献金をするとカーマグネットをもらえるのですが、献金するにはいくつかの条件ががあって、最初の条件「アメリカ市民であるか永住権を認められていること」で条件から外れてしまいました。
600億ドル集めるには、1人50ドルの献金と仮定して1200万人。これはすごい数です。アメリカの“草の根“というか“ロングテール”というか“Wisdom of Crowd”は、確かに歴史を動かしていくみたいです。