Vice Presidential Debate

ジョー・バイデンサラ・ペイリンの副大統領候補ディベートが終わったばかり。速報レポートをお届けします。
この数週間、「情報を得るために読んでいるメディアは?」とか、「過去の憲法修正案で賛成できないと思ったものは?」とか、メディアの突っ込んだ質問にきちんと答えられず、同じ共和党員から「辞任すべきだ」という意見まで出ていたサラ・ペイリン。さらに、有名な女性コメディアンがそんなシーンを面白おかしく誇張した物真似をして大受け。彼女がまともに答えられないインタビューとその物真似シーンを、ニュースで何度見たことか。
だから、政治的な興味というよりワイドショー的興味で、「史上最も高い視聴率をとる副大統領候補ディベート」といわれ「全米だけでなく、世界が注目している」と紹介されてきた。

さて、ディベートですが、ワイドショー的興味で彼女がつまずくところを期待していた人には面白くなかったと思う。直前の3日間の緊急合宿で完璧な準備をしたおかげもあって、予想を裏切るそつのない答えで乗り切った。緊張しているようだったし、支持者に囲まれてスピーチをするときの弾むような感じはなくて疲れて見えたけど、宿題をこなし、加えて自分らしさも発揮できていた。
まあ、ディベートのテーマは限られている訳だからそんなものかなと思うが、外交の時には、聞かれる前に北朝鮮とかパキスタンとか、自分からテーマを挙げて切り込んでいく場面もあり、最後は「自分も医療保険の費用をどうやって捻出するかキッチンテーブルに座って悩むアメリカの中流家庭の主婦だから」と多くの有権者と同じ目線を持つことを強調して共感を呼んだ。

対するジョー・バイデン。彼は調子に乗ると言い過ぎる懸念があると言われてきた。以前に民主党の大統領候補10人くらいで行った討論会で「ブッシュは就任以来、3つの言葉しか話していない。名詞と動詞と911だ」というパンチラインで人気者だったという。
超ベテランで論客としても知られる議員だが、なかなか庶民的な雰囲気もあって、今夜はこちらも上出来。ペイリンに対して先輩風を吹かせたり、強く出過ぎたりせず紳士的に接し、それでも立場を揺るがせない安定感で押し切った。

前回と同じくアナリスト・コメンテーターたちが両候補にプラスとマイナスのポイントをリアルタイムでつけていくCNNで見ていたのですが、始まってすぐには、予想以上にサラ・ペイリンが落ち着いて受け答えをするので彼女にプラスのポイントがどんどん入った。
ジョー・バイデンにプラスポイントが立て続けに入ったシーンは2回あって「アフガニスタン政策が、ブッシュとどこが違うかマケインは具体的なことを言っていない。イラク政策が、ブッシュとどこが違うかマケインは具体的なことを言っていない。パキスタン政策が、ブッシュとどこが違うかマケインは具体的なことを言っていない」と、ブッシュとは違うと言いつのるペイリンに、相手国をひとつずつ挙げて斬っていったときと、司会者に「副大統領職について」聞かれたときに、「現職のチェイニー副大統領は史上最も危険な副大統領だ」と言ったとき。このときは6人のアナリストのうち5人がプラスポイントを加算した。

今夜は多分「サラ・ペイリン不安」を持っていた共和党支持者は、安心したのではないだろうか。ただ、民主党支持者を鞍替えさせたり「いわゆる無党派層」に態度を決めさせる決定的な勝敗は、今夜もつかなかった。
来週10月7日に、2回目の大統領候補ディベートが行われ、さらに第3回がその翌週に予定されている。ディベートで勝敗はつかなくても主張の違いは明確になるから、どちらの候補に投票するか、こうしてアメリカ市民は自分の立場を決めていくのだろう。

日本は解散総選挙が先送りされたみたいですね。オバマ陣営のスローガン、Change We Needは、日本にも言えることなのにね。