北京オリンピック:アメリカTV報道

みなさんオリンピックお疲れ様。17日間、長かったですね。いささか飽きました。
さて、少々長いのですが、アメリカで北京オリンピックがどのように放送されたかご紹介します。
テレビ放送はNBCの独占です。NBCIOCに894億ドルの放映権料を支払ったとされています。日本円に換算して約1000億円。IOCに入る世界中の放映権料の60%を占めるそうです(ワシントンポスト紙による)。日本のNHK&民放が支払ったのが198億円と言われているのでアメリカは日本のざっと5倍。ちなみにアメリカの人口は日本の2.5倍です。
放送はNBC系の5つくらいのチャンネルが担当。NBCMSNBCマイクロソフトNBCの共同ニュースチャンネル)、USA、さらに期間限定の特設オリンピックサッカー専門チャンネル、バスケット専門チャンネルなど。
NBCが一番視聴率の高い競技を放送する。開会式と閉会式は北京の同時中継ではなくて12時間遅らせてこちらのプライムタイムに放送(他局のニュースでも映像を使わせなかった)。
人気競技の水泳、陸上、体操などもアメリカのプライムタイムに編集して放送する。サッカーとバスケット以外の球技(時間がかかる種目)はMSNBCやUSAが放送。面白いと思ったのが、サッカーとバスケットの専門チャンネルができたこと。北京の試合時間に合わせたリアルタイムの放送が多く、予選も含め全試合の放送があった。
放送された種目はかなり偏りがあったと思う。前述のようにサッカーとバスケットは男女とも全試合の放送。
不思議だったのが、野球・ソフトボールをほとんど見なかったこと。ソフトボールMSNBCで日本とオーストラリアの延々続いた延長戦の試合だけは見たけれど、探しても決勝戦をやっていなかった(夜中にあったのなら別だけど)。野球も同じ、プライムタイムの放送は一切なかったと思う。
逆に、またか、と思って見ていたのが飛び込み。飛び込みはシンクロの飛び板と高飛び込み、個人の飛び板と高飛び込みとあって、それも予選、準決勝、決勝と、初日から最終日までほぼ毎日競技があって毎日放送されていた。金メダルは最後の男子高飛び込みでオーストラリアの選手が逆転優勝した以外は中国の独壇場だったのにね。
プール競技ではシンクロの放送がなかった。格闘技系では柔道は一切なし、レスリングは決勝線だけ少しやっていた。テコンドーもなし。ボクシングはけっこう放送されていた。
フェンシング、テニス、バトミントン、卓球は注目の試合はオンエア。放送が多かった球技はビーチバレー、バレーボール、水球ハンドボールなど。ビーチバレーはバレーボールより人気があったみたい(男女とも金メダルだからね)。
水泳・陸上・体操は人気競技なのだけどNBCのプライムタイム放送なので、編集されてオンエアされる。だからアメリカ選手と金メダルをとる選手以外はクローズアップされない。北島康介の二つの金メダルはこちらでも大きく扱われたけど、体操は日本選手の演技をほとんど見なかった(吊り輪から落ちたり鞍馬で失敗したり、失敗演技は放送されたのよね)。ただ、放送が北京時間より12時間遅れなので、日本のサイトで結果を調べておいてリレーで銅メダルをとった水泳や陸上は「あ、これでメダル取るんだ」と狙い打ちして見ていました。
視聴率を調べてみると、さすがにNBCの独壇場で午後8時のプライムタイムは毎日15%〜20%。他チャンネルは取れても5%も行かない。NHK中心の日本と違ってCMが入るNBCだからお金をかけるだけのことはあるという訳なのでしょう。オフィシャルスポンサーになっているマクドナルドやコカコーラ、VISAなど凝ったオリンピックCMがわんさか入っていた。
いま人気上昇中のオリンピック関連キャラクターは、8個の金メダルをとったマイケル・フェルプスご本人よりお母さん。息子が金メダルをとるたびに観客席で大騒ぎをしてすっかり人気者に。オリンピックが終わった昨夜さっそくフェルプス・ママが「息子を誇りに思うわ」と語るジョンソン&ジョンソンのCMが登場している。
そうそう今回のメダル数の話なのですが、こちらNBCの数え方は、ランキングを金銀銅のトータル数で出している。だから、今回もやっぱりアメリカが一番。他のメディアは金メダル数の多い順という日本でもおなじみのランキングですが、NBCだけはトータル数順。だから、アメリカ・中国・ロシア・イギリス・オーストラリアの順。日本は金メダル順だと8位ですが、NBC方式では11位になっている。やっぱりアメリカが一番でなくてはならないのでしょう。新聞のコラムなどでも「今回は開催国なのだから中国が頑張って数多くの金メダルをとるのは当然、華を持たせてあげよう」みたいな論調になっていました。
前半は水泳のフェルプスの金メダル8個でアメリカは意気軒昂な感じでしたが、陸上のリレーで男女ともバトンの受け渡しに失敗したときにはコメンテーターが「I could kill you!」とか「Again? I can't believe it」とか口を極めてバトンリレーの下手さ加減をののしっていました。ソフトボールで日本に金メダルを持って行かれたのも相当に悔しかったらしくて、同じ日に金メダルをとった女子サッカーよりニュースの扱いは大きかった。
でも、最後にビーチバレーで男女とも優勝したし、アテネ五輪で優勝を逃してDream TeamがRedeem Team(雪辱チーム)と呼び方が変わっていた男子バスケットも優勝し、アメリカにとってはまずまず納得のいくオリンピックだったようです。
最後に、毎日中国からニュース番組をオンエアしていて中国のことはとても好意的な報道が多く、中国は相当にイメージアップを果たしたと思います。