大統領選挙CM合戦

久しぶりに選挙選ネタです。ジョン・マケインvsバラク・オバマの大統領選挙のCM合戦がちょっと陰湿な感じに展開を始めている。
先週、中東・ヨーロッパを歴訪していたオバマが、ドイツで20万人もの支持者を集めた集会の映像がニュースで流れた。マケイン陣営のCMはその映像にブリトニー・スピアーズパリス・ヒルトンの映像を構成して流し「オバマはいまや世界一のトップアイドルであることは確かだ。だが、彼は本当にこの国をリードできるのか。彼の政策ではますます中東の石油に頼ることになるし、彼は増税をする」と、指導力・政策の弱さを指摘した。
ブリトニー・スピアーズ:トップアイドル歌手ではあるものの、奇行やスキャンダルで有名。パリス・ヒルトンヒルトンホテル創始者一族のお嬢様で人気モデル・タレントながら数々のスキャンダル。最新の話題は飲酒運転で捕まり執行猶予中にまた交通違反でついに逮捕されてしまったこと。マケインのCMに登場するブリトニーもパリスも、そうしたスキャンダル時のふてくされた表情の映像。つまり「オバマは人気者だけど問題を起こすに違いありませんよ」というメッセージですね。
これに対してオバマ陣営の反応は素早かった。その日か翌日には「マケインの主張はでたらめで陰湿。われわれは中低所得者層の減税を断行するプランをもっている」などと反論して、今度は、マケインとブッシュ現大統領の写真を交互に写して「Same Old Politics」(相変わらずの古くさい政治)と反撃した。
この中傷CM合戦にいたるまでには、いろいろ経緯があった。
まず、随分前からマケイン陣営は、オバマはイランのこともアフガニスタンのことも何も知らないで米軍撤退を言う。われわれはこの1年に3回も現地を慰問して現状を把握していると、負傷しても捕虜になっても甦ってきた不死身の軍人・愛国者マケインの強みを訴えてきた。これに対してオバマ陣営は、民主党の大統領候補がなかなか決まらなかったこともあって、選挙期間中に前線を訪れる用意はある、とずっと主張してきた。
その公約を実現したのが、先週までの中東・ヨーロッパ歴訪だったわけ。マケインは早々と民主党大統領候補になってしまって、たっぷり時間があってイランに何度も行っていたが、当時のメディア報道はささやかなもの。国内のヒラリー対オバマの戦いのほうがずっとニュース価値が高かったからね。
しかし、今回のオバマの外遊は随行した報道陣の多さも訪問先での扱いも「大統領並み」。しかもイラン政府がオバマの米軍撤退計画を支持しくれたりポイントを稼いだ。圧巻がドイツでの20万人集会。この時のニュース映像は確かに圧巻で、ベルリンの広場に見渡す限りの人の波。星条旗が振られたり、オバマの選挙メッセージ「Change」が掲げられたり。なんでドイツ人がよその国の大統領候補者にそんなに熱狂するのか、ま、現ブッシュ政権が本当に嫌いで、現政権の方向性を変えてくれるなら大歓迎、ということなのだろうと思いましたけど。
この期間中、ニュースがオバマ一色になってしまうのをマケイン陣営は何とかしようと、連日、あちこちで集会を開いていたのですが、確かこのドイツのニュースが流れた日は、マケインさんは「パパ・ブッシュ」(ブッシュ元大統領:湾岸戦争をやった人です)と一緒にゴルフカートに乗っていた。現大統領でなく「パパ・ブッシュ」と普通にお友達に見えてしまう次期大統領候補はいかがなものか、と正直思いました。
さてさてCM合戦に話を戻すと、こうした個人攻撃・中傷合戦は、プラスには働かないことのほうが多いのでは? もともとマケイン支持者はブリトニーやパリスと同列のオバマという絵を見て、溜飲を下げるかもしれないけど、態度を決めかねている人たちからは反発も多いはず。さらに、昨日・今日になって、マケイン陣営の側近が、「オバマが大統領になったら、これまでアメリカ国民がなじんできた大統領とはだいぶ違う大統領になるだろう」みたいな発言をして、これが「人種差別的発言」、ついに選挙戦は人種問題に発展した、という論調になってきている。
戦争・環境・経済・外交、何ひとつ上手くいっていない現アメリカ政権。ここまで状況が悪くなって、誰が大統領になってもそう簡単には好転しないだろうと心配する人は多い。マケインはもしかすると本当に「Same Old Politics」しかできない大統領になるかもしれない。オバマは全くの未知数。人気だけが先走っているのは確かだ。どこかの国の「美しい国」を作ると言ってあっという間に腰が砕けた首相のようにならないとも限らない。
実のところ、本当にアメリカの政治を知っていて、問題意識も高くて、具体的な政策を突き詰めて考えていたのはヒラリー・クリントンだったのではないかと、ちょっと思ってしまったりして... 同じように考えて、ヒラリー支持からオバマ支持へ切り替えられない人は多いようです。