国立美術館にて:チープで贅沢な時間

こちらでお友達になった方に誘われてワシントンの国立美術館(National Gallery of Art)に行ってきました。
アメリカで美術館というとニューヨークの近代美術館が有名ですが、ワシントンの国立美術館も、さすがアメリカの首都にドンと構える美術館だけあって膨大なコレクションを持っています。もともとは銀行家アンドリュー・メロンが建物の建築費用も絵画のコレクションも寄付して作られた美術館で、その後も多くの富豪がコレクションを寄付したり、ソ連時代のエルミタージュが資金難に陥ったときに多数のコレクションを買い取ったりして、13世紀の宗教画から現代アートまで「ルーブルに並ぶ」質と量とも言われているとか。
その国立美術館に、毎週1回、日本語のガイドツアーがあるというので行ったわけ。13世紀から後期印象派までのコレクションを納めた西館と、マチス以降の近代・現代アートを集めた東館があって、12時からのツアーが西館、14時からのツアーが東館を回ってくれる。
まず12時、西館の集合場所に時間に行くと、私たちと夏休みでカリフォルニアから来たというファミリー4人の計6人でツアースタート。ボランティアでガイドをしていますという女性は、美術史の研究者なのでしょう、博識で見るべき絵をその背景から描き方の特徴、その絵が後世にどんな影響を与えたかなど、実に豊富な知識を惜しみなく披露して説明してくれる。
13世紀のテンペラ画に始まって、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた世界に3枚しかない女性肖像画の1枚とか、ラファエロレンブラントフェルメールセザンヌ、モネ、ルノアールロートレックドガゴッホゴーギャンピカソ...
その絵が描かれたバックグラウンドとか、細部のこととか、「この位置から見るとこんなことが分かるでしょう」とか、どれも説明を聞くと始めて分かる貴重な情報ばかり。短い時間のなかで数多くの絵を紹介したいのでしょう。移動は早足、説明も早口気味で、歩きながらも「説明しませんが、あそこに見えるあの絵は××で、あとでゆっくりご覧になるといいですよ」などなど、本当に情報を詰め込んでいただきました。1時間15分くらいでしたが、あっという間。
次の14時のツアーまで美術館の地下にあるカフェで軽食のランチをとって東館へ。やはりボランティアでガイドをしているという素敵な女性で、少し関西訛りのゆったりした話し方。英語生活が長いのでしょう、ときどき日本語に詰まっていましたが、ピカソの青の時代から現代アートまで、こちらも楽しい時間でした。特に現代アートは説明を聞かないと分からないものって多いじゃないですか。とても勉強になりました。日本人の描いた現代アートもいくつか展示されています。
わずか3時間ほどの間に、13世紀から21世紀まで美術史の駆け足授業を受けてきた感じ。日をあらためてじっくりひとりで復習しながら回ってみたいと思っていますが、ツアーは別の日に参加すればまた別の絵を見せてくれ、ガイドの人も変わるので別の見方を教えていただけるそうです。
ちなみに国立美術館の入場料は無料。ガイドツアーも無料。とてもチープで贅沢な時間を過ごさせてもらいました。
ワシントンに来る機会があって、予定が合えば、絶対お奨めの時間の過ごし方です。