アーリントン図書館にて

住んでいるアパートから見えるところに図書館があります。Arlington Central Library。アーリントン市の中央図書館ですね。数年前に、岩波新書の「未来をつくる図書館−−ニューヨークからの報告(菅谷明子著)」という本を読み、アメリカの公立図書館はサービスが充実していることを知って、アメリカ暮らしを始めたら何はさておき図書館を使おう、と思っていました。

「未来をつくる図書館」に書かれているのは主にニューヨークの図書館のことで、Public Library(公立図書館)といっても、もとはロックフェラー財団だったかがお金を出して作ったもので、その後、ニューヨーク市に十分な維持費を出し続けるよう法律を作らせたとか、企業や一般市民から協賛金を募って運営をしているという内容が詳しく書かれています(記憶で書いているので、正確でないかもしれない)。この辺についてアマゾンのレビューでは、ニューヨークという特殊な都市だから出来ることなのではないか、と指摘を受けていました。

では、ニューヨークではない、首都郊外の地方(とは言えないかな?)都市であるアーリントン市の場合。運営は市がやっています。利用するには、まず利用者カードが必要。ネットから名前・住所・メールアドレスなどを入力して申し込むと、1週間から10日でカードが届く。市の図書館なので、市内在住か市内のオフィスあるいは学校に通う人、というのが利用者制限。郵便でカードが届くのも市内在住を確かめるためですね。
めでたくカードを受け取ったら始めて行くときに、写真付きのID(免許証とかパスポートとか)で本人確認をしてもらいます。それで初めてカードが有効になる。けっこう厳重な感じがしますが、それなりの理由があります。後で説明します。
利用者カード


充実したプログラムの図書館は2階建て
1階は、子供と若者たち向けコーナー、オーディオ・ビデオ、新刊書、新聞のコーナー、本を借り出したり返したりするカウンターなどなど。
緩やかならせん階段を上がって2階に行くと、レファレンスカウンター、パソコンを持ち込めば無線LANが使えるコーナー、「Public Computers」コーナーはパソコンが30台くらい並んでいて自由に使える。ここは一番混み合うらしく、朝10時頃にはほぼ満席状態でした。「Career Building」仕事をするのに必要な情報を集めたコーナー。 辞書・百科事典・統計資料など調べごとに使う本を集めたコーナー。雑誌コーナー。 本は、図書館ですから見渡すかぎり、といった感じで書棚が並んでいます。学術書から漫画まで(日本の漫画の翻訳たくさんあります)。レファレンス用のPCがあちこちに置かれて探している本の在処を調べられます。 日本語の本も少し(棚1本分くらい)ありました。過去にこの町に住んでいて帰国するときに寄付していったと思われるような本が多かった。 中高年向けには大きな活字の本のコーナーが充実している。

2〜4人がけの小ぶりのテーブルがたくさん置かれていて、足下や壁際に電源があるので、自分のPCを持ち込んで資料を調べている人多数。電源が自由に使えるのは素晴らしいですよね。
まあ、ここまでは自由に使えるPCを提供してくれること、無線LANが使えるなどIT設備の良さが日本の図書館よりはいいかな、という程度です。

次に、図書館はさまざまなプログラムを提供してくれます。ラインナップを一部紹介すると:
中高年のためのワークアウト(体力づくり)、コンピューターの使い方(基礎からパワーポイントまで様々)、読書会、映画の上映、現代アートの楽しみ方、料理教室、著名人の講演会、原稿の書き方、履歴書の書き方、新しくビジネスを立ち上げる方法、NPO法人の作り方・運営の仕方、そして、非英語圏の住民のための「英語レッスン」... →この英語レッスンに次回、参加します!

さて、以上が図書館に足を運んで受けるサービス。さらに、利用者カードの管理が厳重だった理由がここから始まります。
図書館のwebサイトにアクセスして会員番号と名前を入れてログインすると、図書館に行かなくても、さらに充実したサービスが受けられるのです。
日本でも日経テレコンとかの新聞記事検索とか、帝国データバンクの企業情報とか有料データベースがありますが、アメリカは有料のデータベースは日本以上に発達していて、でも有料だと個人ではなかなか使えないじゃないですか。これが図書館が契約してくれて有料データベースがもちろん無料で使い放題なのです。アーリントン図書館が契約している有料データベースは約50種類。

館内をうろつき、目についた本を読みふけって2時間ほど過ごした後、家に帰って図書館にログインしてみました。取りあえず何かやってみようと思い、ニューヨークタイムズの記事データベースへ。1851年以降の記事が検索できます。 松井秀喜じゃ記事が多すぎると思って、野茂英雄で2000年以降という条件で検索したら141件ヒットしました。
このデータベース使い放題は、正直、おいしすぎ!  家にこもらないで定期的に出て行く場所を作ろうと思って図書館を使うことにしたのだけれど、家が図書館になってしまう。わお、って感じです。
ちなみに、会員カードは3年間有効なので、この先3年間は世界中どこにいても、このサービスが使えます(本当は、アーリントンから出て行くときは返してね、ということになっていますけど)。

アメリカの図書館の役割は、住民の生活を豊かにすること、なのです。それも外国人を含めてあらゆる層が対象。日本の公立図書館との差は情けないくらいですね。いやいや最近は日本の図書館もこのくらいのことはするのかな、と思って、念のため東京都立図書館のサイトへ行ってみたら、やっぱり書籍・新聞・雑誌、一部ビデオ・CD・DVDの利用だけだった。 予算が付かないのは分かるし、それなりに頑張っていると思いますが、こうして現状を比べてみると、道路作るより他に使うべきところはあるだろうに、と思わずにはいられない。

愚痴を言っても始まらない。とにかくアーリントンにいるのだから、ここで受けられるサービス、使い倒してみようと思います。