ややこしい書類準備

アメリカの免許証は身分証明書としてとても強力で、免許証があればいろんなことができる。だからクルマの運転に限らずアメリカで免許証はぜひもの。それに法律で半年以上アメリカに住むなら住んでいる州の免許証を取得することが義務づけられている。免許証を取る方法や交通法規は、州によって少しずつ異なる。

我が家のあるヴァージニア州の場合、アメリカ他州とカナダ、フランス、ドイツから来た人は書類の書き換えだけで州発行の免許証が手に入る。それ以外の国から来て住む場合は、筆記試験、視力検査、ロードテストを受けないと免許証がもらえない。なぜフランス、ドイツはOKで他のEC諸国がだめなのか説明はない。フランス人はOKでもイタリア人もベルギー人も信用ならない? 日本、イギリス、オーストラリアなど左右が逆だから試験を受けろというのは分からないでもないけれど。(ちなみにドイツではアメリカ人に対してはロードテストがあるそうです。だから交換条件ではないらしい)

さて、免許証取得の申請をするには、身分を証明する書類が2種類必要なのだけど、普通の外国人には使える書類はパスポートだけで、2つめがない。昔はそんなややこしい書類を要求しなかったのだが、例の911同時多発テロの実行犯たちがアメリカに来て免許を取ったのがヴァージニア州だった。免許証は身分証明書だから、彼らはヴァージニア州の免許を使ってアメリカ国内でテロの準備をした、というわけ。メンツをつぶされた格好のヴァージニア州911の後、ルールをそのまま読んだら外国人は絶対に免許証を手に入れることができないくらい基準を厳しくした。だけどアメリカで免許証なしで生活はできないから、みんな困ってしまった。

日本は大使館が州と掛け合って、日本大使館が日本の免許証を英訳して身分証明に使える書類を発行することになった(有料で19ドルだったかな)。その書類を用意したら、パスポートとかVISAとかその他の必要書類のコピーとともに州政府の担当の部署に送る。これはまだ免許証の申請ではなくて「免許証を申請する資格があるかどうか判断してください」という問い合わせなのだ。2週間くらい待たされて無事に「あなたは免許証を申請してよろしい」という返事が書面で届いたら、始めて免許証の申請手続きが開始できる。何とも回りくどい手順を踏まされる。(この返事が1ヶ月待っても届かず電話で催促をしたら「明日送ろうと思っていた」とそば屋の出前みたいな説明をされたという人もいる)

※この辺さらっと書いていますけど、だいたい「免許証申請の資格を判断してもらう手紙を送る」と言われても、英語でどういう手紙文を書いたらいいか分からないじゃないですか。ネットで調べても文例までは説明されていない。私はこちらに来てお友達になったご近所さんに「どんな手紙送りました?」と聞いて手紙のテキストをいただいた。「私はバージニア州に住んでいます。免許証を取りたいのですが同封した書類で免許証申請の資格を満たしているか判断してください」という意味の手紙文と同封物のリスト、最後に「足りないものがあったらお知らせください」と付け加えた手紙。持つべきものは友です。

さて、我が家では「あなたは免許証申請の要件を満たしている」という返信が10日くらいで無事に届いた。(9月に一時帰国する直前に照会のレターを発送しておいたら、一時帰国から戻ってきたら返信が来ていた)
これでようやく、免許証の申請書をインターネットでダウンロードして記入し、身分を証明する書類と、住所を証明する書類(銀行から送られてくる取引明細とか公共料金の請求書とか公共性の高い機関が発行して住所と名前が記入されている書類)を揃えて筆記試験を受けにいく段取りとなる。だいたい、ここまでで疲れ果てるよね。